なぜ男性ファッション誌『smart』は売れているのか(後編)仕事をしたら“若者はナゾ”だった(3/3 ページ)

» 2011年10月18日 08時01分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]
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土肥:いま、若い男性を理解することは難しい。なので手探り状態で仕事を進めなければいけないこともあると思います。雑誌作りの中で、そうしたシーンはありますか?

太田:ありますね。編集部の平均年齢は30歳前後。編集者が「この情報は読者も知っているだろう」と思っていたら、そこに落とし穴が待っていたりします。知っていることを前提に情報を掲載してしまうと、読者の心に刺さらないことがありますね。

 編集部は手探り状態で「1から教えます」というコーナーを始めました。ファッション誌の編集をしていると、例えばパンツのロールアップは当たり前だと思ってしまう。でも今の若い男性がどのくらい知っているのか、編集部でアンケートを実施しましたところ、やり方が分からないという声が多数ありました。

 そこで「ロールアップは何センチ、何回折りが正解?」(2011年10月号)といった情報を提供しました。編集部では「これは読者が知ってて当たり前!」という前提を疑えという地点からスタートして、企画を立てています。

 このような話をすると、特にファッション誌の編集者は「えー、そんな情報を提供しなければいけないの?」と思われるでしょう。しかし編集部では「これは読者が知ってて当たり前!」という前提はNGという視点で雑誌を作っています。そして若者はこのことを知らないのではないか、と常に検査し、そして仮説を立て、読者の興味はどこにあるのか。この作業を繰り返すしか、方法はないと思っています。

 テレビや新聞などで「今、若い男性の間で○○が注目されている」と報道されたとします。それがファッションでなくても、私は雑誌の守備範囲だと思っています。○○に注目している男性を読者にする……今後もそうした雑誌作りをしていかなければいけないでしょうね。

取材メモ

「分かりにくいものは、あまり読まれない。そして売れなくなる」――活字を生業にしているこの業界では、当たり前のように語られている言葉だ。『smart』の太田編集長も分かりやすさを大切にしているが、同時に「軽さ」も演出しているのが特徴だろう。

「男性が好きなモノであればなんでも。雑誌で扱わない題材はありません」という太田編集長。今後、男性心をつかむために、編集力でどんなモノを取り上げていくのだろうか。


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