なぜ男性ファッション誌『smart』は売れているのか(前編)仕事をしたら“若者はナゾ”だった(1/5 ページ)

» 2011年10月14日 08時16分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

 「雑誌が売れない」と言われるようになってから、もう何年くらい経っただろうか。ひょっとしたら若い世代にとっては、雑誌が売れていた時代があったことすら知らないかもしれない。

 出版業界に逆風が吹き荒れる中、その風をものともしない雑誌がある。そのひとつが男性ファッション誌の『smart』(宝島社)である。販売部数はこの3年で1.5倍増の24万部。日本ABC協会によると、販売部数は男性ファッション誌分野2位の『MEN'S NON・NO』(14万部)を大きく引き離している。

 「男性ファッション誌は本屋で立ち読みすることはあるけど、買ったことはないなあ」という人も多いかもしれない。それなのに、なぜ『smart』は販売部数を伸ばし続けているのか。そのナゾを解き明かすべく、太田智之編集長に迫った。聞き手は、Business Media 誠編集部の土肥義則。

100万部を目指す

『smart』2011年11月号

土肥:太田編集長、雑誌が売れていますね。販売部数を3年で1.5倍も伸ばすなんて、もう“お金を刷っている”といった感覚になるのではないでしょうか(笑)。

太田:いえいえ、そこまでは……。今は24万部ですが、雑誌も工夫次第で100万部のヒット商品になるのではと思っています。

土肥:えっ、100万部!? 100万部といえば『週刊現代』(52万部)と『週刊ポスト』(45万部)を足しても、まだ足りない数字ですよ(日本雑誌協会調べ)。ちなみに男性ファッション誌で、100万部を超えた雑誌ってあるんですか?

太田:たぶん、ないですね。ただ、弊社の女性ファッション誌『sweet(スウィート)』は100万部を販売していますし、今はアイドルのCDがミリオンセラーになる時代。男性雑誌も工夫次第で、100万部を超えるのではないでしょうか。

土肥:なるほど。今日は「なぜ『smart』が売れているのか」――。そのナゾに迫っていきたいと思っているのですが、その前にどんな雑誌かを紹介していただけますか?

太田:分かりました。『smart』は1995年に創刊しました。当時は原宿の一部で起きている現象……いわゆる“裏原宿”を取り上げていました。

 今ではファストファッションなどがあり、誰でもオシャレが気軽に簡単にできる時代。しかし当時は今と違って洋服の情報が少なく、裏原宿で次々にブランドが立ち上がっていました。その服を並んで購入している人たちがたくさんいたことに注目しました。そして、裏原宿で起きている情報を中心に取り上げていましたね。

 読者は裏原宿で売っているブランドをどのようにすれば手にできるのか、といった情報を求めていました。今と違って、服に関する情報に飢えていたんでしょうね。

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