なぜ男性ファッション誌『smart』は売れているのか(前編)仕事をしたら“若者はナゾ”だった(2/5 ページ)

» 2011年10月14日 08時16分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

読者はファッションが好きなのか

『smart』の太田智之編集長

土肥:太田さんが編集長になられたのは、2009年の3月。『smart』の販売部数が伸び始めたころですが、編集長に就任されてまずどのような点に注目されましたか?

太田:まず「読者は本当にファッションが好きなのか?」といった前提を疑うことが大切だと思いました。

土肥:えっ!? でもファッション誌なので、読者が服に興味を持つのは当たり前なのでは……。

太田:もちろん多くの読者は服に興味を持っています。でもそこに編集者が陥りやすいワナが潜んでいるんです。それは「自分たちの読者はファッションだけが大好き」と決めつけること。「自分たちの読者はこうだ」と思いこむのはファッション誌だけでなく、そのほかのジャンルでも見られるのではないでしょうか。

 また「専門誌」と呼ばれている雑誌は、のきなみ苦戦しています。男性ファッション誌をファッション専門誌と捉えるならば、同じ専門誌に携わる者としては「このままでは売れなくなってしまうかもしれない……」という危機感がありました。

 『smart』のコア読者は15〜25歳。また30代の人にも読んでいただいているので「この世代の男性はどういったものに興味があるのか」といったことを考えました。編集部で議論していると、携帯電話、ゲーム、アイドルなどのキーワードが浮かび上がりました。そこで1つの雑誌の中に、読者が“引っかかる”ものをなるべく多く取り上げていこう、ということになりました。

土肥:『smart』を読んでいると、アイドルがたくさん出てきますよね。ページによっては、男性ファッション誌ではないみたい。

太田:「男性ファッション誌はこうだ」という前提をくつがえすのは、かなり勇気がいりました。しかし「ウチの読者はファッションだけに興味がある」というのは、編集者の乱暴な推測なのではないでしょうか。もちろん編集者のカンといったものも大切なのですが、推測ばかりだと読者の興味と乖離していくかもしれません。

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