寒さをどうしのぐか? 被災地に再び冬が来る東日本大震災ルポ・被災地を歩く(3/5 ページ)

» 2011年10月31日 08時00分 公開
[渋井哲也,Business Media 誠]

いまだに「ガレキ撤去」のボランティア

 冬は被災者だけの問題ではない。支援する側にとっても難題だ。

 東北の被災地では冬は雪が降る。雪が積もったり、道路がアイスバーンになったりする。そうなると、個人のボランティアが来なくなる可能性が高い。雪が降り積もる道路を運転できる人は多くないことが予想されるからだ。地元住民でも慎重になる雪道を、不慣れな人たちがやってくるのは不安なはずだ。そのため、雪が降る前に何とかしたいとの思いが支援側にもある。

 陸前高田市社協の災害ボランティアセンターに行くと、受付には「ガレキ撤去」や「草刈り」の項目がある。「いまだにガレキ撤去があるのか」と思ったりする。ただ、住宅地を見渡すと、大きなガレキはもう住宅地には見当たらない。ただ、農地にある細かいガレキがまだたくさんある。震災直後の4月ごろ、そうした細かいボランティアをしている団体をみかけた。

陸前高田市災害ボランティアセンター。現在でも個人、団体とも受け付けている

 あのころよりも細かいガレキが無数にあるという。一方で自立をしないといけないというムードもある中で、「ガレキ撤去」にどんな意味があるのだろうと思った。

 同センターの安田留美さんはこう話す。

 「もともと子どもが少なかったんです。それに加えて、震災で電気も水もミルクもなくなった。親や若い人の仕事もなくなり、市を離れて行く。震災前に、老夫婦とその子どもたちが住んでいたりしましたが、今では老夫婦だけになっているところもある。すると、ガレキ撤去ができないどころか、草刈りも、田畑の作付けもできない。被災者は春先に向けて農地を復活させたいという思いがある。でも、自分たちではやりきれない」

高田高校近く。市街地にはガレキがなくなってきている

 この話を聞くと、ガレキ撤去は単なる「ガレキの除去」ではないと感じた。つまり、被災者が今後、経済的に精神的にも自立していくために必要な、将来への希望を作る援助として機能していると思えた。

 「その意味では、ガレキ撤去は、単にそれだけでなく、将来、どのようにして地域で生活していきたいのか、そのために今何が必要なのかを聞くなどのコミュニケーション・ツールなんです」(安田さん)

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