寒さをどうしのぐか? 被災地に再び冬が来る東日本大震災ルポ・被災地を歩く(2/5 ページ)

» 2011年10月31日 08時00分 公開
[渋井哲也,Business Media 誠]

町の予算で作った仮説住宅には畳を入れられない

 岩手県の畳設置は、災害救助法による国庫負担だ。そのため、住田町独自に建設した仮設住宅(住田型仮設住宅)は対象外となる。岩手県は次のように話す。

 「住田町の仮設住宅は、避難された方のために町独自で作ったものです。その際、NPOと連携するなど、町独自のやり方をして、災害救助法の適用を受けませんでした」(建築住宅課)

 つまり、町の独自予算で建設した仮設住宅は、災害救助法によるものではない。そのため、その後の工事も、法に基づく県の仮設住宅のみが対象になるというのだ。

住田町の仮設住宅には県の予算では畳が入らない)

 住田型仮設住宅は、音楽家の坂本龍一さんが代表を務める森林保全団体「more trees」などが支援していることで話題となった。他の仮設住宅と違って、木造住宅だ。また長屋ではなく、一軒家の形式になっている。町によると、93戸(93世帯)あり、陸前高田市、大船渡市、大槌町から避難している人たちが住んでいる。

 住田町で被災者の支援をしている生活支援相談員の金野純一さん(67)は、仮設住宅に住んでいる人から「ここも畳がもらえるのか?」と聞かれたという。そこで問い合わせてみると、県からの回答は「NO」だった。

 「県には、災害救助法を適用させてくださいと言っています。どうして役所の常識を押し付けるのか。ここにいるのは同じ県民なんだから、適用範囲を広げればいい。災害救助法の枠組みを広げるように、県が国に説明すればいい」

 仮設住宅の自治会は県に畳の設置を要望した。しかし、県からは「町独自の仮設住宅であり、公営住宅と同じ扱い」との返事だ。

 「では、町独自で畳を入れるのか?」と私が町に問うと、「結論は出ていない」と答えた。また「町として県に要望するのか?」と聞くと、「自治会は県に要望しているが、町には要望がない。あれば検討する」と答えるのみだ。どこの仮設住宅に入るかで、格差を生んでいいはずがない。

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