でもおかしなことだ。金融にしろ自動車にしろ、ITをいかに体内に速く取り込むか、融合させるかに競争力の行方をかけていた。当然だ。ITは情報「技術」なのだから、手なずけたヤツが勝つ。融合か連携かなどという言葉遊びをしている場合ではなかった。
融合を「黒船」になぞらえる声も多かった。黒船が来港したのは20年前のことだから、今はもう1873年に当たる計算だ。となると、廃藩置県、円の導入、郵便・電信発足と国内制度もネットワーク整備も始まり、征韓論という海外展開策も打ち出されている時期だ。そういう意味では、融合法制と地デジネットワークが整備されたのはちょうど頃合いということかもしれない。
融合法制の論議は5年を要した。賛否両論が交錯した。いや、当初は反対意見の勢いが圧倒的に強かった。その中で議論を重ね、調整を重ね、そしてやっと「放送法等改正法案」という形にたどりつき、ねじれ国会の中で成立に至った。政府はじめ関係者の努力に頭が下がる。ダメダメな民主党政権だけど、これだけは素直に評価する。
当初、私たちが唱えた「情報通信法」は、通信・放送のタテ割りをヨコにしたり、法律の数を減らしたりすることが主目的ではない。そうした全体見直しの際にこそ可能となる規制緩和が最重要課題だ。地デジ整備後を展望して、新しいサービス、ビジネス、文化を生む環境を整えることだ。
このため、私は以下の項目を実施することが重要だと訴えてきた。
いずれも政治的に超難問。1つでも達成すれば及第であろうと。しかし、今回の法案はこれらをいずれもクリアした。8本の規制法のうち4法を廃止。全体的には大幅な規制緩和と簡素化を断行するものだ。私の知る限り、デジタル化・IP化を世界で最も大胆に取り入れた法スキームだと思う。
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