3.11後のタワーマンションから見えてきた“不動産選びの新基準”郷好文の“うふふ”マーケティング(1/3 ページ)

» 2011年11月17日 08時00分 公開
[郷好文,Business Media 誠]

著者プロフィール:郷 好文

マーケティング・リサーチ、新規事業の開発、海外駐在を経て、1999年〜2008年までコンサルティングファームにてマネジメント・コンサルタントとして、事業戦略・マーケティング戦略など多数のプロジェクトに参画。2009年9月、株式会社ことばを設立。12月、異能のコンサルティング集団アンサー・コンサルティングLLPの設立とともに参画。コンサルタント・エッセイストの仕事に加えて、クリエイター支援・創作品販売の「utte(うって)」事業、ギャラリー&スペース「アートマルシェ神田」の運営に携わる。著書に『顧客視点の成長シナリオ』(ファーストプレス)など、印刷業界誌『プリバリ[印]』で「マーケティング価値校」を連載中。中小企業診断士。ブログ「cotoba


 「3.11」は今年最も人々の心に刻まれた言葉である。

 身にしみた災害の恐ろしさ、人々の絆の大切さ、絶望から立ち上がって頑張ろうとする人々。しかし、ひとしきり落ち着いたところで、「どこに住むか」がクローズアップされた。

 首都圏1都3県の通勤通学者900万人(東京都への流入300万人、都内間移動600万人)のうち、3.11当日には1割近くの人が帰宅困難でオフィスなどに泊まったと推定される(参照リンク、PDF)。私も泊まった。歩いて帰れた人がうらやましかった。都心に住めればいいのに。

 そこで注目されるのが都心のタワーマンション。職住近接の利便性、今回の震災で、改めて職住近接の利便性を感じた人は多かったのではないか。震災前から流入増はあったがさらに注目されていることから、湾岸エリアには大手デベロッパーがタワーマンションを相次いで供給している。

防潮堤の開発で利用の形が変わった湾岸エリア

 そんなタワーマンションに、実際に取材に行ってみた。2012年新春に販売開始予定の「ザ・パークハウス晴海タワーズ “クロノレジデンス”(参照リンク)」だ。

 晴海という海際の埋め立て地は安全なのか? 災害時はどのようになるのか? そもそもタワーマンション生活はどんなものなのか? 三菱地所レジデンス街開発事業部シニアリーダーの亀田正人さんに聞いてみた。

 「クロノレジデンスは海を見下ろす土地にあります。1989年に土地を購入した時、ここは防潮堤の外、“堤外地(ていがいち)”でした。晴海2丁目は地権者が複雑で、しかもバブル崩壊もあったため、開発は進まなかったんです」(亀田さん)

クロノレジデンスの立地

 これまで晴海エリアは、防潮堤がないために建物の建築が制限され、“暫定利用”することしかできなかった。例えば見本市。東京モーターショーの開催で知られた「東京国際見本市会場」は晴海5丁目にあった(1996年に閉場)。また、もともと日東製粉の工場があった晴海2丁目にはシーサイドレストランもあった。

 この地を“内地化”するには防潮堤がいる。民間都市再生事業の認定を受けて海上保安施設の整備、護岸工事に入ったのは2004年ごろ。東京インナーハーバー連絡会議(参照リンク)によると、現在の晴海の地盤高はAP+4.0メートル※で、満潮時の水位AP+2.1メートルを1.9メートル上回る。ただ、伊勢湾台風時にはAP+5.1メートルまで高潮が押し寄せたので、今後AP+6.5メートルの防潮堤も整備するという。

※AP……隅田川河口の水位を測るため、1873年に現在の中央区新川2丁目地先の河岸に設置された霊岸島量水標零位(Arakawa Pail)の略称。1.134メートル引くと、海抜換算になる。
出典:東京インナーハーバー連絡会議

 東日本大震災時には浦安市などで液状化現象が大規模に発生したが、晴海付近ではどうなのだろうか?

 中央区では「黎明橋公園、新月島公園の一部などで地表面に亀裂が入る液状化現象が見られたが、軽微なものだった」と振り返り、「河川や港湾などでスーパー堤防や耐震護岸のほか、水門改修など液状化対策を積極的に推進。橋りょうなどにおいても阪神・淡路大震災後の新基準で液状化対策を進めている」ことから、「中央区においては、津波や液状化の心配はありません」(参照リンク)と表明している。

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