日本のアニメ・マンガは普及しているのか――答えはWikipediaで(続)遠藤諭の「コンテンツ消費とデジタル」論(3/4 ページ)

» 2011年11月24日 07時59分 公開
[遠藤諭,アスキー総合研究所]
アスキー総研

 それでは、マンガはどうなのか? 下の図3は、マンガ作品に関係するカテゴリで集計したものだ。これを見ると逆に、米国のマーベルコミックなどの作品も相当に強いものの、『NARUTO』の70言語にはじまって、日本のマンガがいかに世界に浸透しているかということが分かる。登録されている約1万作品のうちの3分の1程度、約3800本に日本語以外のページがある。

マンガ作品に関しての、Wikipedia他言語ページの開設状況。アメコミも上位に食い込むが、それでもトップの『NARUTO』をはじめとする日本のマンガの強さが際だっている(クリックして拡大)

 メディアの垂直統合が叫ばれた時代に書かれた『ハリウッド/巨大メディアの世界戦略』(滝元晋著、日本経済新聞社)は、いま読んでも教えられることの多い本だ。この中で、米国の「エンターテインメント産業」の規模は、個別の作品からテーマパークまで、正確に総額を示すデータはないが、自動車や食品などの巨大産業といわれてきたものを超えていると書かれている。しかも、その輸出比率が高いことが指摘されている。

 経済産業省がコンテンツ産業を重視するのは、このような背景を見れば当たり前のことなのだろう。そして、「クールジャパン」というかけ声のもと(その声は、前回書いたようにやや自家中毒的な匂いがするのだが)、アニメやマンガを中心にしたポップカルチャーを推していこうというのも、ここでの集計を見ればうなずけるものだ。

 日本のコンテンツの人材に関しては、コミックマーケットのような豊かな地下水脈があり、それらを含めて出版社やアニメ制作会社によって商品化される生態系もある。このデータを見ていて分かるのは、課題は、コンテンツのデリバリーやエクスチェンジの部分だということだ。そして、日本のコンテンツ企業がディズニーやハリウッドのメジャーのような大企業ではないということである。

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