デジカメ全盛の時代だけど……暗室barで手焼き写真はいかが?郷好文の“うふふ”マーケティング(2/3 ページ)

» 2011年12月08日 08時00分 公開
[郷好文,Business Media 誠]

フィルムの楽しさを伝えたい

 最初はポラロイドから始まった。ミヤモトさんたち創業メンバーはWebサイト「POLASTYLE」の企画・運営事業をメインに、有限会社モノグラムを2001年に設立。単なるインスタント写真の愛好サイトではなく、ポラロイドを通じて“フォトカルチャー”を広めるサイト。次第にファッションやアート、音楽好きの若者たちの交差点となった。

 「ポラロイドで写真集を作りたい」というファンの声に応えて、100人が撮った100枚の写真集『Camera People』が生まれた(2006年)。これが予想以上に反応があった。

『Camera People』

 しかし、世の中の流れは圧倒的にデジタルカメラ。フィルムカメラの価格も下がり、プリントは減る一方。モノグラムがWebサイト運用を受託する富士フイルムでも、「何とかフィルム文化を継承できないか」と悩んでいた。前後して、米国ポラロイド社が倒産。

 そこでモノグラムは「それなら自分たちの写真店で楽しさを広めよう」と考えた。今の場所に店舗兼ワークショップ兼事務所を借りると、富士フイルムは中古の現像機を安価で譲ってくれた。

 2007年に開店したのは、作業場が丸見えの異色店舗。ひとりひとりのお客さんと長いやりとりで要望を聞いていたのは、初代店長の仲小路さんと4人のアルバイトスタッフ。ミヤモトさんはこう語る。

 「モノグラムでは初めてのお客さんに好きな写真家を尋ねます。その写真家の色味に近付けてプリントを調整するからです。デジタルだと細かく調整できませんが、フィルムなら好みを聞いてサンプルをお見せして、色合いやトリミングを決められます。郵送も受け付けますが、直接お話をうかがわない分、どんな写真が好きか分かりませんから、最初は2つの色合いで焼き増しサービスすることもあります」

 比べてみると、同じネガでも焼き方によって結果はかなり違っていた。モノグラムでは単に現像するだけでなく、好みに合ったフィルムをお勧めしたり、オリジナルフォトブックなど飾り方や見せ方もアドバイスしたりする。

 だが、Web制作から入ったミヤモトさんたちは写真のプロではない。そこまでできるのは先の店長・仲小路さん、そして若くして写真技術歴10年の経験をもつ現在の店長・東さんの存在がある。モノグラムにとって彼女たちは“神様からの賜りもの”だろう。

 センスの良いグッズもたくさん。カメラケースにストラップ、トイカメラ、アルバム、フォトスタンド、公募デザインで制作するiPhoneケースなど。モノグラムの売り上げはWeb+プリント+商品(直販&卸売)の3本柱で成り立っていて、割合も3分の1ずつとバランスがいい。

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