デジカメ全盛の時代だけど……暗室barで手焼き写真はいかが?郷好文の“うふふ”マーケティング(1/3 ページ)

» 2011年12月08日 08時00分 公開
[郷好文,Business Media 誠]

著者プロフィール:郷 好文

マーケティング・リサーチ、新規事業の開発、海外駐在を経て、1999年〜2008年までコンサルティングファームにてマネジメント・コンサルタントとして、事業戦略・マーケティング戦略など多数のプロジェクトに参画。2009年9月、株式会社ことばを設立。12月、異能のコンサルティング集団アンサー・コンサルティングLLPの設立とともに参画。コンサルタント・エッセイストの仕事に加えて、クリエイター支援・創作品販売の「utte(うって)」事業、ギャラリー&スペース「アートマルシェ神田」の運営に携わる。著書に『顧客視点の成長シナリオ』(ファーストプレス)など、印刷業界誌『プリバリ[印]』で「マーケティング価値校」を連載中。中小企業診断士。ブログ「cotoba


 開始時間に数分遅れた。狭い階段を上がると入口には暗幕が掛かり、中から声が漏れてくる。暗幕の前には「チン」と鳴らすベルがある。

 鳴らしてみる。すると、「暗室barにようこそ」と声がして、暗幕がそっと開いた。不用意に開けると“感光してしまう”からだ。

 「暗室bar」は東京・学芸大学駅前の写真店「monogram(モノグラム)」の2階ギャラリーで開催している手焼きのプリント体験ワークショップ。赤い光だけの部屋で、写真を浮かび上がらせる感動の瞬間を体験できる。

 「今夜はみなさんお持ちのネガを手焼きでプリントします。堅い説明は抜きにしまして、まず乾杯しましょう!」

 「いえーい! やってみよー!」

 「なぜか3人とも大阪出身でして」と始まった掛け合い漫才の写真教室は、部屋の暗さと裏腹に異様に明るかった(笑)。講師の暗室マスター林和美さん(写真専門ギャラリーのナダール主宰)、1階の写真店モノグラムの東尚代店長、そして創業メンバーの1人であるミヤモトタクヤさん。

赤暗くて分かりにくいが、真ん中左が林さん、右が東さん

 参加者はプロの写真家からアマチュア、うふふマーケッターまで多彩。共通するのはフィルム写真好きということだけ。ネガと愛用カメラ、お酒を持参して“手焼き”を楽しむのである。

 引き伸ばし機の脇には現像液、停止液、定着液と水を入れたトレイが4つ。まず小さな印画紙にネガを試し焼きして明るさを決める。

引き伸ばし機(きたし氏作)。ネガをネガキャリアにはさみ、印画紙をイーゼルに置いて、ヘッドから光を当てる

 そして本番。引き伸ばし機のボタンをちょんと押して露光させる。印画紙を現像液に浸す。「出てくるかなあ……」と待つこと数十秒。じんわりと現れてからが速い。撮影シーンが網膜に映るようによみがえる。

よみがえる撮影シーン

 参加者の中に、勤め先のお客さんが譲ってくれたライカでフィルム写真にハマった女子がいた。彼女の写真アルバムの出来がすばらしかった。構図も瞬間のとらえ方も焼きの色合いもいい。写真に添えたひと言が詩的だ。それをサカナにみんなで語り合う。こんな“カメラピープル”が増えている。

 私が持ち込んだ10数年前のネガはぼやけていた。「そのときキャパの手は震えていた」(from『ちよっとピンぼけ』)ならぬ、「いつも郷さんの手は震えている」と言われる私の腕は昔から変わらない(笑)。

 モノグラムではフィルム写真の楽しさをイベントやサービスで広めている。ミヤモトさんにその歴史を聞いてみた。

右で話している蝶ネクタイの男性がミヤモトさん
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