何が問題なのか? メディアにころがる常識津田大介×鈴木謙介、3.11後のメディアと若者(1)(1/6 ページ)

» 2011年12月09日 08時17分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

 メディアが構造的な問題に苦しんでいる――。購読部数の減少、広告収入の低下など、ビジネスモデルに限界がきているのだろうか。現状を打破するために各社はさまざな取り組みを見せているが、いまだ暗中模索といった状況だ。

 こうした現状に対し、ジャーナリストの津田大介氏と社会学者の鈴木謙介氏はどのように見ているのか。30代の2人が、徹底的に語り合った。この対談は全7回でお送りする。

プロフィール

津田大介(つだ・だいすけ)

ジャーナリスト/メディア・アクティビスト。1973年生まれ。東京都出身。早稲田大学社会科学部卒。早稲田大学大学院政治学研究科ジャーナリズムコース非常勤講師。一般社団法人インターネットユーザー協会代表理事。J-WAVE『JAM THE WORLD』火曜日ナビゲーター。IT・ネットサービスやネットカルチャー、ネットジャーナリズム、著作権問題、コンテンツビジネス論などを専門分野に執筆活動を行う。ネットニュースメディア「ナタリー」の設立・運営にも携わる。主な著書に『Twitter社会論』(洋泉社)、『未来型サバイバル音楽論』(中央公論新社)など。

鈴木謙介(すずき・けんすけ)

1976年福岡県生まれ。関西学院大学 社会学部 准教授。専攻は理論社会学。情報化社会の最新の事例研究と、政治哲学を中心とした理論研究を架橋させながら独自の社会理論を展開。著者『カーニヴァル化する社会』(講談社)以降は、若者たちの実存や感覚をベースにした議論を提起しており、若年層の圧倒的な支持を集めている。著者は『サブカル・ニッポンの新自由主義』(筑摩書房)ほか多数。現在、TV・ラジオ・雑誌などを中心に幅広いメディアで活躍中。最新刊に『SQ “かかわり”の知能指数』がある。


メディアのビジネスモデル

津田大介さん

鈴木:津田さんはネットだけにとどまらず、テレビやラジオにもよく出演されています。今のメディアには、どのような課題があると感じていますか?

津田:テレビ、新聞、ネットメディアに関わらず、「ビジネスモデル」が課題になっているのではないでしょうか。まずマネタイズの仕組みをきちんと確保しなければいけません。そしてマネタイズを確保しながら、どこまで「ジャーナリズム」を担保できるのか。このバランスはこの1〜2年で、大きく変わってきていますね。

鈴木:それはテレビや新聞もお金がなくなってきているということですか?

津田:ですね。報道というのは未曾有の事態が起きたときのために、お金を貯めておかなければいけません。なので東日本大震災が起きたとき、各社は一斉に報道しましたが、やがてお金がなくなってくると報道をしなくなってしまった。民放は視聴率をとるために、バラエティ番組に戻さざるを得ない現実がありました。

 その一方で公共放送のNHKは視聴者からいただいている受信料があるので、民放に比べ震災を丁寧に報道していますよね。

鈴木:確かに。NHKは小さなニュースでも追っかけて報道していますよね。全体的に高齢者の問題に偏りがちな傾向はありますが、被災地の雇用支援をしているNPOの話など、民放ならどうしても「感動バイアス」がかかるテーマを、丁寧に作ってました。こうした社会貢献的なネタもきちんと報道するのは、なかなか民放ではできないですよね。

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