野球をつまらなくしないでくれ、オヤジたちよ郷好文の“うふふ”マーケティング(2/3 ページ)

» 2011年12月15日 08時00分 公開
[郷好文,Business Media 誠]

GMよ、職分をまっとうせよ

 2つのエピソードでは肩書きがたくさん登場する。ややこしいので役割をまとめてみよう。まず球団内である。

  • 監督……自軍の戦力を見極め、最大の効果を発揮するべく起用を行う人
  • GM……自軍の戦力を分析し、過不足を補強やトレードなどで調整し、チーム構想を作るリーダーで、チームイメージを決めるマーケター
  • オーナー……球団を保有する組織の代表者

 問題は「GMって何?」である。清武氏は「コーチの任免権を侵害された」と暴れたが、日本ではGMと監督の役割分担はそれほど明確ではない。長期政権の監督が「あいつを取れ」もあるし、GMが野球に素人の事務屋の場合もある。「新聞記者出身の清武氏がどれほどGMとして機能したか?」は問題だし、さらに巨人では記者出身者が球団幹部にもいるわけで、とやかく言えないとも言える。

 GMの真骨頂は「人材の目利き」である。メジャーリーグの名GMとして27年間のキャリアを積んだパット・ギリック氏の業績を振り返ろう。

 ブルージェイズ(1977〜1994)で弱小球団を地区、リーグ、そしてワールドシリーズと三段跳びで優勝まで導いた。弱かったオリオールズ(1996〜1997)では13年ぶりのプレーオフ進出、翌年地区優勝。マリナーズ(2000〜2003)ではイチローと大魔神佐々木主浩投手を獲得し、2001年に地区優勝を遂げた。彼の離脱後は毎年のように最下位。27年のシーズンのうち、地区優勝以上11回の華々しい戦績で2010年に野球殿堂入りした。

 彼はバーゲン人材発掘の名手だった。安い選手を見つけてはリーグを代表する選手に育てた。そのポイントは5つ。「1.人材にタブーなし(ラテン系の安い・強い国から選手を獲得)」「2.勝つための条件を考える(球場の広いマリナーズで好守備のイチローを獲得)」「3.人間性を見る(アスリートとしての適正)」「4.長期視点を持つ(一度ダメでも二度三度のチャンス)」「5.聞く(レストランのウエイターのような外野からも意見を聞く)」。

 GMはGMの職分をまっとうせよ。「人材の目利き」こそファン主義なのだ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.