被災者の声を聞こう! そうすれば何かが見えてくる相場英雄の時事日想(2/3 ページ)

» 2011年12月22日 08時00分 公開
[相場英雄,Business Media 誠]

ぜひ現地に

 そこで筆者が同氏に勧めたのが、実際に現地に足を運び、自らの目で被災者の現実に触れることだ。

 本稿で過去何度も触れてきたが、津波被害に遭った現場に実際に立つと、テレビや新聞で知っているはずの風景が、全く別物だと皮膚感覚で知ることができる。

 同氏には、こんなことも勧めた。

 筆者と同じく、このイラストレーターにも仮設住宅に住む友人がいる。実際に仮設住宅を訪ね、寒風が吹き込む住居の実態を肌身で感じることも必要ではないか、と勧めた次第。

 なぜこんな事柄を書き連ねているかと言えば、「最近、ありがた迷惑なボランティアやイベントが増えつつある」(被災地の商工会関係者)との声に接しているからだ。

「応援していただく気持ちはありがたいが、ようやく復職し、先々のことを考え始めた矢先に『がんばれ』と連呼されると、あの日を否応なく思い出してしまう」(別の商工会関係者)、「現在はお金を出せば一通りの生活物資が購入可能になった。物資をご提供いただくのはありがたいが、これ以上モノをもらうと、生活再建に向けた自律の心が折れてしまう」(商店主)など、現地の声はさまざまなのだ。

 繰り返しになるが、被災地の支援に対するニーズはさまざまであり、震災発生当初のような炊き出しや食料品の提供は既に無用になりつつある、という。「地道に支援活動を展開するNPO団体などと連携し、細かな需要に対応してくださるとありがたい」(同)というのが現地の人が抱く本音だ。

 筆者自身はどうするか。震災前からお世話になっている鮮魚店が営業再開し、ネットでの注文も受け付けてくれるようになったので、このお店から鮮魚を買い続ける予定だ。

 この店には、被災した漁師さんが魚を直接持ち込むシステムも構築された。微力ではあるが、魚や加工品を買い、これを筆者の友人たちにお裾分けし、あるいはその存在を知らせることで、地元産業に対して息の長い応援をさせていただく。

 また、仮設住宅に住む主婦たちが始めた手仕事にも強い関心を抱いている。職を失った婦人たちが地元企業とタッグを組み、地元ならではのグッズ制作を始めたのだ。これも口コミで友人たちに仕事の意義を伝えていく予定だ。要するに、被災地の中にお金が落ち、現地の皆さんにお金が回るシステムを個人的に応援させていただく腹づもりなのだ。

水浜地区、ホタテ養殖の作業小屋。地区内に複数設置され、多数の住民が共同で作業していた

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