片道1万円でアジアへ、LCCが開く“空のシルクロード”郷好文の“うふふ”マーケティング(2/3 ページ)

» 2011年12月22日 08時00分 公開
[郷好文,Business Media 誠]

企業も人もフラットなアジアへ

 だが、舞台となるアジア市場は大きく変わりつつある。まず、オフショア(海外生産)からマーケット(販売市場)への変貌である。年収5000〜3万5000ドルの中間層は10億人へと膨張しつつある。1960年代の日本市場がいくつもできるイメージだ。それを狙って、事業軸をアジアに移す日本企業が増えている。

 人の流れも変わる。これまで留学生といえば海外で学び、本国に帰って就職を有利にするパターンだった。MBAも含めて「留学=ハクを付けて帰ること」。一方、日本企業は「留学生=組織に馴染まない人間」といって敬遠してきた。

 しかし、もうそんな“鎖国”は終わり。これからは留学先で就職してネットワークを作り、資産を作って、本国や「第二の祖国」で起業する。国際人の目と意思を持つ若者たちが自由に就業する。もちろん“留学者という変人”すら雇用できない日本企業はどんどん淘汰される。

 人材のアジア化は芸能界やスポーツ界でも加速中だ。ホリプロは海外市場でタレントの発掘をする自由な経営へ移行するため、MBOによる上場廃止を発表した。スポーツ界ではサッカー前日本代表監督の岡田武史氏が中国リーグの監督に就任し、野球界では元ヤクルトの広沢克実氏がカンボジア代表チームのコーチに就任。才能発掘がアジアスケールとなる。

 アジアがフラットになる――それが空のシルクロードの果たす役割である。

外国で就職するコツは“私だからできる”

 ところで問題は「どういう人材がフラットなアジアで生き抜けるのか?」である。

 仕事場にしているギャラリーでここまで原稿を書いた時、お客さんがやってきた。若い女性。ギャラリーで写真展を開催しているため、鑑賞に来たのだ。「いらっしゃいませ」と“店員”行儀で声をかけると、彼女はけげんそうに首を傾げた。

 「郷さん、私が分かりませんか?」

 ああ、なんてことだ。最近女性にそう言われたのは実は2回目(笑)。そろそろトシか。

 「私って……。あ! juncothebirdさん!(Twitterのアカウント名)。なぜあなたがここにいるの?」

 「ホリデイです。先週から日本に帰ってきています」

 彼女はIT企業のマーケティング担当としてバンクーバー(カナダ)で働いている。Webサイトもカスタマーケアも、リーフレット作成も製品説明もトレードショウのプレゼンもする。もともと英語が得意だったが、留学してそのまま居ついて就職するなんて、なかなかできるもんじゃない。そこで聞いてみた。

 「どうやったら、あなたのように外国で就職できるんですか?」

 彼女は感慨深げに言った。

 「3回も4回も面接で失敗しても、まだあきらめないで挑戦を続けるには、『自分ならできる』と信じていることがあることですね」

 外資系企業ではポジションがあり、そこにマッチしなければ、いくら才能があってもダメ。つまり巡り合わせ。だから、面接でハネられても「自分ならできる」「自分だからできる」と強く思い続けられることが大事。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.