ビッグデータに過剰な期待を持つな(1/2 ページ)

» 2013年01月02日 00時00分 公開
[トッテン ビル,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール:トッテン ビル

アシスト会長。1969年に米国の大手ソフトウエア会社の一社員として市場調査のために来日し、1972年にパッケージ・ソフトウエア販売会社アシストを設立、代表取締役に就任。2006年、日本に帰化し日本国籍取得。2012年、会長に就任。


 今、IT関連で注目されている用語に「ビッグデータ」がある。企業はビジネスにおいてデータや情報を活用するためにさまざまなITを利用しているが、ITにおける「ビッグデータ」とは巨大なデータ、ということでありよく引き合いに出されるのはFacebookなどのソーシャル・ネットワークである。

 ビッグデータの特徴はそのボリュームだけでなく扱うデータの種類が多いことだ。数字や文字だけでなく、文章、音声、動画などの非構造化データも含まれ、この取り扱うデータの多さが、従来のデータとビックデータを区別するものかもしれない。そしてすでにビッグデータを活用しているのが、GoogleやAmazon、FacebookなどのWebサービス事業者で、顧客の属性をとらえて、広告やリコメンデーションなどを打ち出している。

 しかし、いくら大量のデータがあってもそれだけでは価値はない。企業に必要なのは、そのデータをもとによりよい意思決定をし、企業競争力を強めるのに役に立つ「情報」である。データと情報は同じではないことを心に留めておく必要があるだろう。

 またビッグデータを集めても、それに比例して情報量が増えるのではない。例えばソーシャル・ネットワークにはいくつもの冗長している部分がある。ツイートやシェアされたものは、データ量として増えても、情報としてその価値が2倍になるわけではないからだ。重複が多いほど、それが人々の興味を引くものであったという情報分析を行い、それを即座にビジネスに結びつけるという使い方は危険である。人の興味や嗜好は冷めやすく移ろいやすいことを考えると、ツイートを頼りに商売をすることはあまりにもリスクが大きいからだ(ちなみにツイッターの“Twit”という単語は、バカとかまぬけ、という意味だ)。

 IT業界に40年以上たずさわっていて思うのは、特にカタカナやアルファベットを使ったマーケティング用語には注意をした方がいいということだ。英語を母国語とする私が分からないようなあいまいなものもある。まずは日本語で再考し、日本語で意味のあるものなら検討の余地がある。クラウドコンピューティングもその1つで、かつてデータセンターやリモートコンピューティングサービスと呼ばれたものと、基本的にどこが違うのだろう。

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