大虐殺は昔の話、ルワンダで環境専門家として働くということ世界一周サムライバックパッカープロジェクト(2/4 ページ)

» 2012年01月03日 08時00分 公開
[太田英基,世界一周サムライバックパッカープロジェクト]
世界一周サムライバックパッカープロジェクト

「支援は外部の人がやってくれるもの」という意識

――ルワンダの環境改善施策で、これまでどんな困難があり、どのように乗り越えてきたのですか?

三戸 サブ・サハラ・アフリカ※共通の課題だと思いますが、「支援は外部の人が訪れて全部やってくれるもの」という意識が、こちらの行政官には多いです。

※サブ・サハラ・アフリカ……アラブ系の多い北アフリカを除いたサハラ砂漠以南のアフリカを指す。

 ですから気を付けないと、せっかく事業自体のアイデアが良くても、外国の専門家に頼り切りになり、専門家がいなくなったとたんに状況が元に戻って、それまでの努力が無駄になる事例が多くあります。

 そのようなルワンダ側の意識をどう改善し、特に事業期間終了後にルワンダの関係者が継続して適切な活動を、技術的にも資金的にも自らで続けられるかどうかが大変重要で、かつ克服が難解な課題です。

 正直、この困難をしっかり乗り越えられたら私の関与はもう不要ですし、ルワンダに居座る必要はないと思っています。また、この点を克服するノウハウがしっかり蓄積すれば、今のようにアフリカへの援助が何十年も続けられることはないでしょう。ですから、この「強度の依存体質」という課題をどう乗り越えるかについて、現在引き続き努力中+試行錯誤中、というところです。

――海外に渡った理由やきっかけを教えて下さい。

三戸 日本では主に環境省、一時期は内閣総理大臣(当時は小泉純一郎氏や安倍晋三氏)を補佐する内閣官房というところで働いていました。その際も「現場を大切にする意識」は大事にしていたつもりですが、現実の仕事はどんどん現場から離れていく気がして落ち着かない日々でした。

 これに加えて、「環境保全の観点から途上国支援をしたい」という思いは大学生のころから持っていたので、「せっかくだったら何でも社会問題がそろっているアフリカで、かつ、環境問題に取り組むことのできる現場を見つけて働いてみたい」という希望が強くなっていました。

 幸い、日本政府が支援して国連に若手を派遣するJunior Professional Officer(JPO)という制度に応募して選ばれたので、最終的にアフリカに行こうと決意した次第です。

 ですから、海外勤務の経験はほとんどルワンダで、あとはアフリカの他国でごく限られた経験があるのみです。

――海外で働くという志向をもともとお持ちでしたか?

三戸 大学生の時に「何を将来したらいいかなあ」とは漠然と考えていて、その当時の結論は「環境保全の観点から途上国支援に関わりたい」というものでした。

 結果的にそれが海外で働くということに発展しましたが、途上国との関わりがあれば、拠点が日本であるか海外であるかは、今でもあまり気にしていません。

――今後のルワンダ(アフリカ)の政治動向・経済動向について、どのように感じていますか?

三戸 アフリカ全体についての答えは私の知識が乏しすぎてできません。ただ、一般に政治の安定が続けば経済発展は進むと思いますし、今はそういう局面の国がアフリカでは多いと思います。

 またどこの国でもそうですが、経済発展が一定程度進めば、「内戦を起こすよりは、ビジネスでひともうけした方が得」という流れになっていくでしょう。明らかに今のルワンダでは、その「ビジネスを進めた方が得」という声が国民の間に強いと思います。

 ただ、確か2017年に大事な大統領選挙があり、現カガメ大統領の後任をどうすべきかが議論されることになりますので、ここで後継者の擁立が滞ると、いくつかのアフリカ諸国で政情不安になっているように、ルワンダでも政治・経済が悪い方向に進んでいく危険性はあると思います。

 ここ数年は、よっぽどの事情がない限り、政治状況は比較的安定的な状態が継続し、経済発展も進むと思います。

 ご存じないかもしれませんが、ルワンダは1994年には大量虐殺が発生したことで有名ですが、小さい国ですから、ある程度の知識さえあれば、その知識を関係大臣に1人で売り込んで実現を目指すことも可能です。例えば、私が行ったアスベスト除去国家計画の策定のように。そういう意味では、日本でできることとはまた違った仕事のやりがいがあります。

 なお、『ホテル・ルワンダ」などの映画だけでルワンダをご存じの方には意外でしょうが、現在ルワンダはアフリカで最も治安の良い国の1つと言っていいと思います。赤道のすぐそばですが標高が高いので(首都キガリ市は約1400メートル)、気温も常に摂氏20度前後で快適です。経済発展で店舗やレストランも徐々に充実してきており、生活はしやすい場所だと思います。

 個人的にも「都会のサービスはあるけれども、基本的には田舎で自然も残っている」程度の位置にあるキガリ市は、住んでいて心地よいです。

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