ここで疑問が浮かぶ。医師会などが反対しているからとはいえ、東京大学医科学研究所という権威のある研究機関の「近い将来におこる医師不足」というデータが、なぜ我々のような一般人にあまり知らされていないのか。
「舛添要一大臣の時代まで、厚生労働省は一貫として、医師は足りている。医学部の定員は減らさなくてはいけないというデータを出し続けていたということもありますが、大きな要因のひとつは、医療費亡国論がいまだに尾をひいているからではないでしょうか」(久住医師)
1983年、厚生省保険局の吉村仁局長が、「医療費が増大すると国が滅ぶ」ということを唱えた。これを受けて、医療現場では医療費抑制政策が進んだ。医療ニーズが増大する中、診療報酬切り下げにより、医療行為の単価が下げられ、都立や県立などの公立病院の収支が悉く赤字に転落した。結果、人や設備への投資ができなくなり、医療の安全性が低下した。
大手マスコミというのは基本的に高級官僚からの「ネタ提供」によって報道をつくるシステムだけに、高級官僚のストーリーと齟齬(そご)のあるデータは大きく取り扱われなかったのかもしれない。
しかし、ここにきて「医学部新設」の動きが徐々にでてきている。
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