街から医者が消える? 東大の研究所が明かす、“医療の不都合な真実”25年後の恐怖(3/4 ページ)

» 2012年01月10日 08時01分 公開
[窪田順生,Business Media 誠]

30年前の高級官僚が唱えた「医療費亡国論」が諸悪の根源?

 ここで疑問が浮かぶ。医師会などが反対しているからとはいえ、東京大学医科学研究所という権威のある研究機関の「近い将来におこる医師不足」というデータが、なぜ我々のような一般人にあまり知らされていないのか。

 「舛添要一大臣の時代まで、厚生労働省は一貫として、医師は足りている。医学部の定員は減らさなくてはいけないというデータを出し続けていたということもありますが、大きな要因のひとつは、医療費亡国論がいまだに尾をひいているからではないでしょうか」(久住医師)

 1983年、厚生省保険局の吉村仁局長が、「医療費が増大すると国が滅ぶ」ということを唱えた。これを受けて、医療現場では医療費抑制政策が進んだ。医療ニーズが増大する中、診療報酬切り下げにより、医療行為の単価が下げられ、都立や県立などの公立病院の収支が悉く赤字に転落した。結果、人や設備への投資ができなくなり、医療の安全性が低下した。

 大手マスコミというのは基本的に高級官僚からの「ネタ提供」によって報道をつくるシステムだけに、高級官僚のストーリーと齟齬(そご)のあるデータは大きく取り扱われなかったのかもしれない。

 しかし、ここにきて「医学部新設」の動きが徐々にでてきている。

25年後、こうした看板も消えてしまうかもしれない

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