コラム
» 2012年01月16日 11時45分 UPDATE

短期集中連載・mixiはどこへ行く?:最終回 1500万人を満足させることは可能か――問われる「ネットベンチャーの雄」の舵取り (5/7)

[まつもとあつし,Business Media 誠]

 2012年1月現在、結果的にこのオープン化の取り組みは「うまくいった」とは言えない状況にある。昨年の9月以降、以下のような大型アプリが相次いで終了することが報じられているのだ(参照リンク)

サービス提供を終了した大型mixiアプリ

  • Rakoo「みんなの農園」「ハッピーアクアリウム」「RockYou! スピード★レーシング」
  • ハッピーターン氏「あしあとプラス」
  • ロックユーアジア……提供10タイトル中8タイトルを終了

 また、クリックするだけの「イイネ!」ボタンよりも、コメント付きで投稿のハードルは上がるが、より感情が伝わりやすいとした「mixiチェック」の設置サイトは2000強に留まっている。

パブリックとプライベートの狭間での試行錯誤

 大型アプリのサービス終了、mixiチェック設置数の伸び悩み――これらは、ゲーム系のソーシャルアプリ、それを専門とするモバゲーやGREEに注力するデベロッパーが増えている、あるいは、イイネ!やチェックボタンが、Facebookの「いいね!」や「シェア」に押されているという見方もできるだろう。しかしそれ以前に、mixiがこれまで、これらの機能をサードパーティが利用するためのAPIの利用規程を頻繁に変更しているという事情がある。利用規程の変更の都度、デベロッパーはアプリやサイトの改修を求められる。これが負担になり、収益の割が合わないという判断に至り、mixiから撤退するケースが多いのだ。

 mixiのAPI利用規程は、図に示したパブリックとプライベートの範囲にまつわる点でこれまでも頻繁に更新されてきた。例えば2010年3月に提示された改定は「デベロッパーが取得できるユーザーIDの範囲を、当該アプリを利用するユーザーとそのマイミクまでとする」というものだった。これによって、足あとの履歴やmixiユーザー同士の対戦を主な目的としたアプリは魅力を大幅に失ってしまうことになる(例えば、人気を集めていた「あしあとプラス」の終了は、これが大きな原因になったと見るのが自然だ)。

 mixiアプリでゲームを提供するデベロッパーの多くは、mixiアプリの魅力を別のところに見いだし、ユーザーの離反を防ぐことに多くの労力を割いている。しかしそれよりも、他のプラットフォーム、特にバーチャルグラフとも呼ばれる、ユーザー同士がより幅広く(リアルな関係に縛られず)対戦・交流できるような環境を用意しているところに引っ越す方を選択するのが合理的という判断に至るデベロッパーが増えているのだ。

 「リアルな知人・友人の更新情報に、見知らぬユーザーからのゲームへの誘いが同じように表示されたら、やっぱり驚くユーザーも多いはずです」と原田氏は述べる。今回のmixiページ開始をきっかけとするタウン構想は、ユーザーが明示的にパブリックの領域に「出掛けた」際に、あたかも現実の街のように様々な情報が飛び込んでくるが、いったん「ホーム=家」に戻れば親しい友人・知人と安心して交流ができるようになることを目指している。

 昨年のオープン化以降も、このようにパブリックとプライベートの狭間でmixiの試行錯誤は続いている。バーチャルグラフを前提とするGREEやモバゲータウンのように、ゲームを中心に据え、はじめからパブリック志向、つまり、見ず知らずの他者との交流を主眼に据えるサービスに対して、リアルグラフ志向のmixiには考慮・調整すべき要素が多い。交流できる範囲を拡大することは、逆にユーザー、特にいまやmixiの利用者層の中心となったライトなユーザー層にとっての不安や唐突感につながるというジレンマがそこにはある。イノベーター層やアーリーアダプター層であれば理解し、ついてこられる変更であっても、ライトなマジョリティ層にとっては苦痛になり得るのだ。

 リアルグラフにこだわるmixiにとって、このことが先に述べた2つのハードルの1つとなっているはずだ。プラットフォームに微妙かつ繊細な調整を加えながらサードパーティとの関係を維持、再構築できるのか。mixiはまさに正念場を迎えている。

 なお、先の図に示したようにアメーバブログ(アメブロ)を展開するサイバーエージェントの場合は、自ら広告代理業を営み、アメーバピグなどの各種アプリサービスの多くを自前で整えている。mixiがオープン化を進め、サードパーティを巻き込んだエコシステムを構築しようとしているのとは対照的だ。

 Facebookも自前で広告を募り、配信できる仕組みを様々に備えているが、mixiは決算短信の中で「インターネットメディア事業の売上高において広告収入への依存度が高いこと、数社の代理店・メディアレップの比率が大きいこと」をリスクとして認めている。マネタイズを景気や季節要因で変動する広告に頼るか、アイテム課金に期待するかで、コンテンツ設計も大きく影響を受けることにも注意しておきたい。

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