“社会起業家”は結果であって、目的ではない――ルワンダ発フェアトレード事業の内側世界一周サムライバックパッカープロジェクト(3/4 ページ)

» 2012年01月17日 08時00分 公開
[太田英基,世界一周サムライバックパッカープロジェクト]
世界一周サムライバックパッカープロジェクト

「貧しいのでかわいそう」というアプローチではダメ

――ルワンダ(アフリカ)でのフェアトレードの可能性について、どのように感じていますか?

 RuiseBの商品は、費やした時間や製作の困難度などを考慮して支払いをしている点で、フェアトレード的な要素を持っているかと思います。

 しかし、ルワンダと日本は距離的にかなり離れていることから、商品の輸送にかかるコストがかなりかかるため、ビジネスとしてやっていくには商品の付加価値を高めて高級品として売っていくなど、日本での独自の戦略が必要です。

 「アフリカ→貧しい→かわいそうだ→何とか買ってあげよう」というようなアプローチでは、日本での販売に限界が出てくると思います。つまり商品そのものに魅力があるものでないと、日本のような消費者の目が厳しい市場では、継続して売っていくことは困難です。

 そのため、日本の市場に適う高品質の商品作りに徹し、それを日本のデパートなどの高級商品を扱う場で、ほかの商品ときちんと勝負をして売れるようにすることが大切だと考えています。

 その上で、適正な製作コストをルワンダの生産者に払い、結果としてフェアなトレードを行う必要があると思います。

――仕事面のほか、ルワンダと日本の違いをどういった部分で感じていますか?

 国として、特に独立後の歴史がまだ浅いですから、市民の権利、政治参加、表現の自由など、日本の憲法で規定されているような内容が保障されているとは言えません。

 国民が自らの手で国を作るための土台作りはまだまだこれからといった感じがします。そのための教育が求められていると思います。

――言語の壁以外に、ルワンダに来てから立ちはだかった困難はありますか?

 時間感覚、約束の遵守など、日本で当たり前のことがなかなか守られないことなどがありますね。

 この2点に関することで、最初の1年は特にいろいろ苦労しました。政府に関わる仕事は、特に事業進行にかかる時間のペースが遅く、事業の実施をするのに内部での承認手続き、調達手続きなどで1年かかって、ようやくというのもざらにあります。

 例えば、バナナの繊維を生かしたテキスタイルプロジェクトなどは、政府機関などが関わって進めているため、2段階の研修をやったものの、3年近く経った現在も、まだ大学の研究機関に導入する予定となっている研究機材が導入できない状態が続いています。

――海外(ルワンダ)で働くこと、生活することの魅力について教えて下さい。

 海外で働くことの魅力は、日本での経験や知見を生かして、それを海外で応用したり、適用したりできること。日本の常識とは違ったアプローチで物事を進めることができることでしょうか。

 特にルワンダは、1994年のジェノサイドで国が荒廃した悲劇的な歴史を持っていますが、現大統領のリーダーシップの下、著しい経済発展のさなかにあります。

 海外にいて、日本の戦後を今経験しているような部分もあり、同じ時代にいながらもタイムスリップしているような感覚が不思議なところです。

 例えば白物家電など、まだまだ首都キガリの富裕層しか普及しておらず、農村地域には皆無です。調理道具は、かまどか炭を使う炭火コンロが主流です。

 ルワンダはアフリカの中でも、かなり治安がいい方ですが、外国人にとってこうした国で生活をするのは決して安上がりでなく、警備をつけたり、安全な地域に住まなければならないので、かなり高くつきます。なので、どこかに雇用されるか、自分で安定した収入を確保しないと生活はなかなか大変です。

 国の制度が未整備なところで、ビジネスをやっていくのは難しいところもありますが、現地の人たちと一緒に一から立ち上げ、新しいものを作り出していける面白さがあるかと思います。またルワンダの商品を日本市場とつなげることで、日本とルワンダの懸け橋の役割も担えます。

 また、海外にいるとどこでもそうですが、日本という国を客観的に見られるようになります。特に日本人にとってアフリカは遠い国で情報がほとんど入ってきません。なので、自分たちがメディアの役割を担い、情報発信をしていくことが、日本で得られる情報とのギャップを埋めるのに重要だなと感じています。

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