それにもかかわらず、住宅販売の現場では、営業マンがこのようなトークをしている。お客さんを目の前にして、耐震等級の基準を見せながら「建築基準法を満たしていれば倒壊の心配はありません」と。
「建築基準法」という表現が曖昧(あいまい)なために、もはや法が消費者を誤った選択に導いているといっても過言ではない。
ちなみに、マンションは耐震性を高めようとすると、莫大なコストがかかるうえ、柱も太くなり居住スペースが狭くなるといったデメリットがある。そのため耐震構造や免震構造が採用されている耐震等級2以上の物件は、全体の1〜2割程度しか供給されていないのが現状である。
たとえ、倒壊には至らないにしても、阪神・淡路大震災時の死亡要因は「圧死・窒息」(77%)がトップ。負傷者の48.5%は「家具などの転倒・落下」となっていることを考えると、「倒壊しないから安全」という理屈はまるで当てはまらない。
また、資産価値という視点で考えた場合、「震災前」と「震災後」に建てられた物件ではどちらを購入したいと考えるだろうか。
現在の建築基準法は阪神・淡路大震災の教訓から改正されたものであるが、大災害の後に建築基準が見直されることは珍しいことではない。その場合、改正前に建てられた物件の資産価値が低下してしまうリスクもある。
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