“棚を耕す”書店に行こう! カリスマと呼ばれるのには理由がある相場英雄の時事日想(2/3 ページ)

» 2012年02月23日 08時00分 公開
[相場英雄,Business Media 誠]

「棚を耕す」

 ここ数年、筆者が親しくさせていただいている書店員の1人が、こんな言葉を口にした。

 「棚を耕す」――。

 棚とは、もちろん商品である書籍や雑誌を入れる書棚のこと。この書店員の場合、新聞やテレビのニュースに注意を払う。例えば、大規模災害が起きた際には「防災関連の本を一番目につきやすい位置に」、地元出身のプロスポーツ選手が活躍を始めたら、関連書籍をまとめたコーナーを迅速に作る、というのが「耕す」という言葉の根底にある。

 また、別の店長はこんなスゴ技を持っている。東北のターミナル駅ビルにある小さな書店には、1日中さまざまな人が集う。こうした客の中に、定期的に長期出張に出かけるサラリーマンがいる。この御仁、出張前にいつもこの小さな店舗に足を運び、店長を指名したうえで、タイトルや著者を知らずともお勧め本を10冊単位で購入していくという。

 店長によれば、「お客さまの購入履歴のほとんどが頭の中に入っているため、『地味だけどこの本をお勧めしてみよう、別のジャンルだが気に入ってもらえるはず』などと常に考えている」という。

 実際、この店舗では、筆者自身もまとめ買いを行う。店長やスタッフが知恵を絞って作り上げた“棚”には、文芸だけでなく、人文やビジネスなどさまざまなジャンルの書籍が並び、どれも面白そうに映るからだ(実際に外れはなかった)。

書店活用術

 最後に、筆者が実際に行っている書店活用術を披露させていただく。作家という仕事をしているが、驚くほど読んだタイトルの数は少ない。

 近々、仕事上の大きな山を越えることから、ここ数年、ほとんど読む機会がなかった海外ミステリーやサスペンスを4、5日間集中して読もうと決めた。そこで思い起したのが、首都圏の小さな地場書店の店員さんの顔。彼はマニアの域をはるかに越えるタイトルに精通しているのだ。

 筆者が好きな作家や既読タイトルを告げ、10冊程度お勧めをお願いした。実際に店舗で取り置きまで頼んだ。

 筆者が依頼メールを送ってからわずか10分で以下のようなリストが届いた。未読の作品ばかりだが、外れはないと確信すると同時に、読み出す前からわくわく感が高まっている。

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