マスコミに登場する医者は名医――そう思っていませんか?大往生したけりゃ医療とかかわるな(3)(2/3 ページ)

» 2012年02月24日 08時00分 公開
[中村仁一,Business Media 誠]

(12)外科の教授は手術がうまい

 時々、年寄りの患者の中には、手術の痕を見せながら、○○大学の△△教授に切ってもらったと自慢する人がいます。教授の選考基準に手術の上手、下手は入ってはいません。多くは研究論文の数と内容で審査をパスした研究科教授です。もちろん、手術の上手な教授もおられるでしょうが、それは個人の資質であって、教授だからではありません。昔は、一度も切った経験のない教授もいたとか。今でも「天皇杯争奪、全日本メスさばきコンテスト」などという催しは聞きません。

(13)マスコミに登場する医者は名医だ

 名医とは何ぞや。事件を起こしたり、ベストセラー本を書いたり、テレビ出演が多く名前の売れている有名な医者というのならわかります。世渡りに長けているということは首肯できますが、先にも述べたように、現在の日本に、その腕の程を保証する客観的情報はないのです。このような状況下で『日本の名医百人』などという本が売れているようです。定義や基準もないのに、誰がどのように選んだものか、ただただ頭が下がります。

(14)医学博士は腕がいい

 医学博士は、前述のごとく、腕と全く関係のない学問的業績に対して、学位を授与されたものです。かつて、医者を辞めてジャーナリストに転身した永井明さん(故人)という人がいます。彼はその著書『ぼくが医者をやめた理由』の中で、「感染ストレス時におけるラットの血中脂質濃度の変化」というタイトルで博士号を授与されましたが、「これは外科医として何の役にも立たなかった」と述べておられます。宜なるかなといえましょう。

 私自身持っていないから僻んでいうわけではありませんが、博士号は昔から「足の裏についた飯粒」といわれています。その意は「取らないと気持ちが悪いが、取っても食えない」。特に、石を投げれば医学博士にあたるといわれるぐらい、この業界には多いのです。

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