著者プロフィール:石塚しのぶ
ダイナ・サーチ、インク代表取締役。1972年南カリフォルニア大学修士課程卒業。米国企業で職歴を積んだ後、1982年にダイナ・サーチ、インクを設立。以来、ロサンゼルスを拠点に、日米間ビジネスのコンサルティング業に従事している。著書に「『顧客』の時代がやってきた!『売れる仕組み』に革命が起きる(インプレス・コミュニケーションズ)」「ザッポスの奇跡 改訂版(廣済堂)」がある。
近年、米国の大手老舗百貨店は史上最大の窮地に立たされている。名指しするとシアーズ、JCペニーなどといったところだ。「百貨店」とはいっても、これらは日本の人がイメージする百貨店とはちょっと雰囲気が異なるかもしれない。もっと庶民的な、言うなればイオンやイトーヨーカドーのようなところをイメージしていただきたい。
つい先日、シアーズは4000店舗中の1200店舗を売却する意向を発表したばかりだが、昨日、そのシアーズが自らを倒産から救うために講じている新たな戦略について興味深い記事を読んだ。
ずばり言うと、顧客データのマイニングとモバイル・テクノロジーを駆使したポイントプログラムに会社の命運をかけているということだ。シアーズの現CEO、ルー・ダンブロシオ氏は小売業界の出身ではなく、テクノロジー業界から引っ張られてきた人だが、同氏の言葉を借りると、「シアーズを小売の墓場から救う道はこれだけ」という勢いで、テクノロジー分野での投資を強化しているということらしい。
最近、地域限定で開始されたプログラムでは、ポイントプログラムのメンバーがスマートフォンアプリで店舗にチェックインすると、店員がその顧客の来店を感知し、購買履歴やWeb(シアーズ・ドット・コム)の閲覧履歴にアクセスした上で、顧客の興味に合わせたセール情報を教えてくれたり、店内を案内してくれたりするという。
店に足を踏み入れた途端、見知らぬ店員が近寄ってきて、「いらっしゃいませ、石塚さま。先日、オンラインでチェックされていた靴が安くなっておりますよ」などというシーンが展開されるわけだ。ちょっとうすら寒いような気がしないでもない(同じようなサービスを米高級デパート、ニーマン・マーカスでもやり始めたと最近報道されていた。パーソナルなサービスや特典と引き換えに、プライバシーを放棄するか否か、そんな選択を迫られる時代が来ようとしているのか)。
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