ITで震災からの復興を果たすために大切な3つのこと中村伊知哉のもういっぺんイってみな!(1/3 ページ)

» 2012年03月29日 13時53分 公開
[中村伊知哉,@IT]

中村伊知哉(なかむら・いちや)氏のプロフィール:

慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授。京都大学経済学部卒業。慶應義塾大学博士(政策・メディア)。デジタル教科書教材協議会副会長、 デジタルサイネージコンソーシアム理事長、NPO法人CANVAS副理事長、融合研究所代表理事などを兼務。内閣官房知的財産戦略本部、総務省、文部科学省、経済産業省などの委員を務める。1984年、ロックバンド「少年ナイフ」のディレクターを経て郵政省入省。通信・放送融合政策、インターネット政策などを担当。1988年MITメディアラボ客員教授。2002年スタンフォード日本センター研究所長を経て現職。

著書に『デジタル教科書革命』(ソフトバンククリエイティブ、共著)、『デジタルサイネージ戦略』(アスキー・メディアワークス、共著)、『デジタルサイネージ革命』(朝日新聞出版、共著)など。

中村伊知哉氏のWebサイト:http://www.ichiya.org/jpn/、Twitterアカウント:@ichiyanakamura


※編集部注:本記事は2012年3月26日に@IT「中村伊知哉のもういっぺんイってみな!」で掲載された記事を転載したものです。

 3.11は、平時から有事への政策転換をうながした。

 コンテンツ政策も同じ。

 コンテンツ政策は今世紀に入りようやく政策領域として認知されたものだが、その眼目は「コンテンツ産業の発展・成長」だった。それは平時における成長戦略としての位置付け。有事においては別の目的が先頭に立つ。

 「安全・安心の情報共有」「海外への正しい情報発信」といった事柄だ。そして、であるからこそ、政策としての重要性が高まっているわけだ。エンターテインメント産業の拡大をもくろむ政策なんてものはいわば「遊び」の産業政策。これに対し、国家危急に際しての情報戦略こそがコンテンツ政策の本丸。そういう意味では、こうした不幸な事態に至り、やっとコンテンツ政策が本分を見極める機運となった次第だ。

 あれから……1年。復興のつち音が聞こえる。

 復興にITは決定的だ。被災地でも、生活物資の確保や道路交通インフラの整備などと並び、情報手段の確保は大事な課題。しかし同時に、日本全体の復興策、新しい社会の建設策にどうITを役立たせていくのかがより本質的な問いだ。「ものづくり=技術力」と「コンテンツ=文化力」のドッキングで、安全で活力ある社会の再生を果たすにはどうすべきか。

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