マーケティング・リサーチ、新規事業の開発、海外駐在を経て、1999年〜2008年までコンサルティングファームにてマネジメント・コンサルタントとして、事業戦略・マーケティング戦略など多数のプロジェクトに参画。2009年9月、株式会社ことばを設立。12月、異能のコンサルティング集団アンサー・コンサルティングLLPの設立とともに参画。コンサルタント・エッセイストの仕事に加えて、クリエイター支援・創作品販売の「utte(うって)」事業、ギャラリー&スペース「アートマルシェ神田」の運営に携わる。著書に『顧客視点の成長シナリオ』(ファーストプレス)など、印刷業界誌『プリバリ[印]』で「マーケティング価値校」を連載中。中小企業診断士。ブログ「cotoba」
初めての旅先で街を歩き出す。右も左も分からない。地図を開いて建物や道路を見て、「どこだろう?」「ハハン、ここにいるのか」「じゃあこっちかな」と地図を閉じて、バッグに入れる。繰り返すうちに地図が山折り・谷折りでぐちゃぐちゃになる。それならいっそ、「丸めちゃえばどうだろう?」。
「Crumpled City MAP(クランプルシティマップ)」(1680円)は、くしゃっと丸めて持ち歩ける地図。このアイデアはとても“うふふ”だ。何度も使って地図がくしゃくしゃ(クランプル)になるころには、私たちはその街の東西南北がアタマに入っているはず。そうなったら捨てちまおう。
直近ではフランクフルトで行われたインテリアデザインのトレードショーで、DESIGN PLUS2012を受賞。2011年にはさまざまな欧州デザイン賞を受賞した地図シリーズから、私は「TOKYO」編を購入。記述は英語だ。だが、“常識人”の私には丸める勇気がすぐには出なかった……。
画期的なデザインのCrumpled City MAP。「こんなアイデアどこから?」と好奇心モリモリで、開発元のフィレンツェのPalomar(パロマー)社に話を聞くと、商品アイデア発想の“道しるべ”が見えてきた。
インタビューしたのは同社のDr.Cristina Cencettiさん。まずは「どんなきっかけでこの地図が生まれたんですか?」と尋ねてみた。
「何世紀にもわたって使われてきた紙の地図は、旅をし、発見し、冒険するためのツールでした。職人の手で精密かつ正確に制作されてきました。大きなサイズの紙を開いたり閉じたりするわけですが、できるだけ元の折り方でと思うのに、山折りと谷折りが逆になってイラつくことはありませんか?」
あるある! 特に「オレは今どこ?」と迷子になった時、開いたりたたんだり街を呪ったり。そんな時に限って雨が降ってきて、ミジメな気分になったり……。
高密度ポリエチレンに印刷された地図は、かつて流行した紙製ヨットパーカーの素材感に似ている。サイズは横870ミリ×縦580ミリと大きめだがとても軽い。折り目はあるようでなく、山折りでも谷折りでもOK。引っ張っても破れないし伸びない。水をザーッとかけても弾く。
ただ、地図の記述は割とあっさりしていて、「もう少しランドマークがあってもいいかも」という気も。ただ、それは北は浅草から南は六本木まで、それなりに大きなエリアをカバーするため仕方ないのかもしれない。
さらに話を聞いていくと、そのデザインに込められた“丸めて捨てられない”思想も見えてきた。
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