鉄道からバス転換で浮かび上がる、ローカル線の現実杉山淳一の時事日想(1/5 ページ)

» 2012年04月13日 08時01分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)

1967年東京都生まれ。信州大学経済学部卒。1989年アスキー入社、パソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年にフリーライターとなる。PCゲーム、PCのカタログ、フリーソフトウェア、鉄道趣味、ファストフード分野で活動中。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。2008年より工学院大学情報学部情報デザイン学科非常勤講師。著書として『知れば知るほど面白い鉄道雑学157』『A列車で行こう9 公式ガイドブック』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」、Twitterアカウント:@Skywave_JP、誠Styleで「杉山淳一の +R Style」を連載している。


 JR東日本は3月30日、岩泉線のバス転換方針を正式に発表した。そのプレスリリースには「鉄道として復旧することは断念せざるを得ず」とある。文面はこの種の報道発表としては珍しく「気持ち」がこもっていて、存続を願っていた地元に配慮した内容だ。また、断念に至った経緯として、岩泉線の営業収支なども詳しく説明されている。これも珍しいことである。

 岩泉線は岩手県の山間部にあるローカル線である。起点の茂市駅は、盛岡と三陸の宮古を結ぶ山田線の宮古寄りにある。終点の岩泉駅はその北東に位置する。路線の長さは38.4キロメートルで、東京―立川間(37.5キロメートル)、新大阪―京都間(39.0キロメートル)とほぼ同じ。ただし運行本数は少なく、全線を往復する列車は朝1往復、夕2往復、区間運転が1往復だけだった。

 そして現在は運休中。2010年7月に全国で被害を出した集中豪雨により、押角駅―岩手大川駅間で土砂崩れによる脱線事故が発生した。その後の安全性調査により、沿線に88もの危険箇所が判明した。それから現在に至るまで、岩泉線はJR東日本によるバス代行運転が続いている。

 私は岩泉線に乗ったことがない。乗りたかった。復旧して欲しかった。そんな鉄道ファンも多いだろう。しかし、鉄道はファンのために走っているわけではない。地元の人々のために走っている。地元は鉄道の復活を望んでいるが、JR東日本としては今後もバス代行としていきたいという。それが今回の報道発表だ。

岩泉線の位置(赤い線)。終点の岩泉駅から日本三大洞窟の龍泉洞へアクセスできる(出典:Google マップ)

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