なぜジブリは国民的映画を創り続けるのか新連載・アニメビジネスの今(2/4 ページ)

» 2012年04月17日 08時01分 公開
[増田弘道,Business Media 誠]

国民的映画と言われるワケ

 ジブリの強さは「最高のクオリティを提供する」ということに対する観客からの信頼(ブランディング)が絶対的なところにある。2006年に日経BPコンサルティングが実施したブランド調査でトヨタ自動車やソニーといったグローバルブランドをおさえて首位となっているが、その観客からの信用がケタ外れのビジネス的成功度につながっているのだ。

 次表は国内の歴代興行収入ベストテンだが、トップは『千と千尋の神隠し』。ジブリ作品はほかにも3作品がランクインしており、世界的ブランドであるジェームズ・キャメロン作品やハリー・ポッターシリーズに勝っている。

国内歴代興行収入ベストテン(出典:日本映画製作者連盟)

 スタジオジブリ作品は『もののけ姫』(興行収入193億円)の時にそれまでトップだった『南極物語』(1983年)の興行収入110億円を大幅に上回り映画関係者の度肝を抜いたが、『千と千尋の神隠し』では304億円の興行収入を記録しただけでなく、のべ2350万人もの観客を動員し日本中が驚いた。2001年当時の人口は1億2731万人なので、単純計算で5.4人に1人が見た計算になる。

 『千と千尋の神隠し』のDVDとVHSを合わせたパッケージの販売数は550万本、この数値にはレンタル分も含まれているのでさらに多くの人が視聴していると見込まれる。そして、テレビでも2003年の初回放映時に46.9%と年間視聴率1位を獲得し、過去5回の平均視聴率が25.9%だったことを考えると、数千万人がこの映画を視聴した可能性がある。まさに「国民的映画」と言われるゆえんである。

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