「日本は三流の国」と言われた――マイケル・ウッドフォード氏インタビュー(3/4 ページ)

» 2012年04月19日 06時55分 公開
[堀内彰宏,Business Media 誠]

なぜコーポレート・ガバナンスを是正できなかったか

――第三者委員会の調査報告書でオリンパスのコーポレート・ガバナンスの実態について書かれていました。ジョブローテーションが行われていなかったなど、いくつか問題が指摘されています。社長として是正する責任はあったと思うのですが、是正できなかったのはなぜですか。

 私は2011年4月1日から社長になったので、半年しか務められませんでした。正直、私が社長になってから分かったことだったのですが、菊川剛会長(当時)が執行役員や部長レベルの人事権を握り続けていました。ですから申しわけないのですが、私が変えようと思っても、一夜のうちには変えることはできなかったんです。

――財務部門が少数の担当者で掌握されていたといったことは、かなり前から分かっていたことなのではないでしょうか。

 財務部門の権限が3〜4人に集中していたという問題ではなくて、会社全体の権力が1人に集中していたことが問題だったんですね。私は社長になるまでは欧米の事業を担当していたので、正直、役員会の回り方も分からなかったんです。社長になってから役員会で各人の挙動を見る機会があったのですが、基本的にみんな独裁者にへつらっているイエスマンばかりでした。海外メディアはよくその表現を使っていたのですが、その通りでした。

 実質的な財務担当役員はいなかったんです。川又洋伸取締役執行役員という人がいて、その上に森久志副社長(当時)がいたのですが、彼もどちらかといえば菊川剛会長(当時)の手伝いという感じだったので。

 私を批判するプロパガンダがいろいろ出されました。その中でも私が「組織の階級を尊重しない人間」と言われたのですがその通りです。私が欧州のトップになった時、役員会議室のテーブルを変えました。それまでは長方形のテーブルだったのですが、そうすると議長席にみんな目を向けるんですね。そこで私は丸いテーブルにしました。すると、階級を意識させることなくお互いに活発な議論ができるようになったのです。良い会社ほど、階級が目につかないはずだと私は信じています。

 私はオリンパスの社長として国内の大株主を訪問した時、机の座り方から封建的な形骸化した階級を感じさせられたことがあったのですが、それは会社の衰えの証だといつも思っていました。

――あえてうかがうのですが、アップルはスティーブ・ジョブズ氏がCEOだった時、必ずしもコーポレートガバナンスがいい会社とは思えませんでした。しかし、業績は絶好調で、良い作品も生み出せてきたのですがそれはなぜでしょうか。

 一概には言えないのですが、私はスティーブ・ジョブズ氏の経営をとても敬愛しています。アップルでは、オリンパスで起きたような不正は起きていないと思います。アップルの経営はすべての会社に当てはまるとは必ずしも思えませんが、彼らのやり方で実績をあげていますよね。やっぱりそれは評価すべきだと思います。

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