コントロールできるものと、できないもの――それが部下育成部下育成の教科書(6)(3/4 ページ)

» 2012年05月03日 00時00分 公開
[Business Media 誠]
  • 視野を広げる

 「それはうちの部署の論理だろう? 営業、開発はこの件をどう見ているんだ? そもそも、お客様にどんな影響が出ると思う?」など。

 自分が持っていない視野に自分自身で気づくのは大変難しいもの。なぜなら、自分が持っていない視野は、自分にはまだ見えていない世界だからです。これに気づくには、体験の過程で、すでにその視野を持っている人からの関わりを受けることが効果的です。「この人の立場・状況から見たらどうか」「こういう観点で見るとその案でよいのか」「なぜそう思うのか」など、部下が気づいていない視野を提示したり、根拠を問うような関わりがこれに当たるでしょう。

  • 体験の意味づけをさせる

 「今回は苦労したと思うが、よく頑張ってくれた。何より君自身が難しいと言っていた、他部署の人とうまく関係を築きながら仕事をするということが、今回の仕事で身についたんじゃないのか?」など。

 体験と周囲の関わりがトランジションを促進させるわけですが、体験や関わりそのものが大切なのではなく、重要なことは体験や関わりを通じて部下本人がそこから何に気づき、学び取るかです。

 同じ体験を積んでも、そこから多くを学ぶ人とそうでない人がいます。せっかくよい体験をしても、そのまま放っておいては、そこから学ぶかどうかは本人任せになってしまいます。周囲が関わることによって、体験と学習を結びつけるのです。

 特に、若手社員の場合は、振り返りをする力が未熟です。大変な思いをした仕事や、失敗した体験などは、なかなか意味づけられず、それどころか「思い出したくもない」と頭の中から捨て去られてしまいます。これではせっかくの学びの機会が台なしです。一緒に振り返りをすることで、一段高く長期的な視野から「その体験を通じて何を学んだのか」「それは自分にとってどういう意味を持つのか」などを問いかけ、言葉にしてあげるとよいでしょう。振り返りを通じて内省(自分自身への問いかけ)を促すような関わりがこれに当たります。それはまさに、体験を糧にする作業です。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.