「抑える」そして「伸ばす」――部下を育成するポイント部下育成の教科書(7)(2/4 ページ)

» 2012年05月04日 00時00分 公開
[Business Media 誠]

「抑える」と「伸ばす」を両輪として、トランジションを果たす

 段階が変わることによって、学び、身につけなければならないことはたくさんあるでしょう。その中でも特に身につけるべきこと、変えるべきことが、この核心となる意識・行動です。

 先に述べた体験や周囲の関わりは、むやみに体験を積ませ、関わればいいというわけではありません。ここで紹介するような意識・行動を身につけてもらうために、それを意図して体験を積ませ、部下に関わりたいものです。

 新たな段階に適応していくときのビジネスパーソンの体験談から、核心となる意識・行動には「抑える」ものと「伸ばす」ものの2つがあることが分かっています。新たに身につけることや、さらに磨くことといった「伸ばす」ものだけでなく、これまでの段階ではやってきたことだが、新たな段階ではしないようにするといった「抑える」ものがあるのです。

 これまで育成や教育、成長という言葉を耳にすると、私たちはつい「伸ばす」ものばかりに目が向きがちだったように思います。いつも追加で何か新たなことを学び、身につけるもの、と考えていたのではないでしょうか。それは一側面としては正しいのですが、同時に、以前の段階での意識や行動でうまくいっていたとしても、新たな段階では抑えなくてはならないこと、やめなくてはいけないものもあることを、理解しなければなりません。

 この「抑える」ものと「伸ばす」ものがセットで身について、初めて新たな段階へ「トランジション(転換)」できるのです。「伸ばす」方向にばかり努力して、「抑える」べきものを放置しているがゆえに、新たな段階に適応できない、成果が上がらないという人も多いのです。これまで持っていた意識や、やってきた行動は、本人の癖のようになっていることも多いですから、これを「抑える」ことにも努力がいります。

 核心となる意識・行動は各段階のトランジションごとに複数ありますが、すべてではなくとも、このうちいくつかができるようになってくれば、次で説明するトランジションの出口のサインが見えてきます。

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