エリアごとに生き残れることが大事――猪瀬副知事が目指す、東京の危機管理(3/5 ページ)

» 2012年05月11日 16時14分 公開
[堀内彰宏,Business Media 誠]

批判するだけではなく、作っていくことを考えることが大事

猪瀬 東京湾に天然ガス発電所を作ろうという提案をしていて、5カ所くらい候補地を挙げているところです。次画像はコロンビア大学が考えた、アブダビで高い鉄塔に野菜工場を作ろうという発想です。東京湾に天然ガス発電所を作ると、煙突があるので東京の人間は嫌がります。しかし、次画像は太陽光だけなのですが、天然ガス発電所の煙突を排熱利用した野菜工場にすると、迷惑施設が観光施設になります。お台場の観覧車のように、夜がとてもきれいになります。

 生産地と消費地を分けて考えてきた反省ということも、やはり東京の人間は考えないといけないと思います。

 東京に直下型地震が来ると言われていますので、1つの(対策)例をお示しします。次画像は水道管なのですが、水道管が地震でグッと曲がったり、ずれたりした時に少しクッションがあるような新しい管が開発されて、今の水道管の3割くらいはこれなのですが、できるだけ急いで取り替えていきます。そうすると地震でも水道管がぽきっと折れることがなくなります。

 東京の地下には、太いものから家庭のところまで含めて地球半周分の水道管が埋まっています。地震の時にまず火事が心配ですが、水道管や下水が全部壊れると一見大きな被害のように見えないですが、この間(震災時)のディズニーランドの浦安市のように生活できなくなってしまいます。トイレも使えません。

 最後に東京水道のPRをしておくと、1300万人の水道をコンピュータでコントロールしています。次画像は2011年1月29日にカタールで行われたアジアカップ決勝の日本VS.オーストラリア戦の時の水道の動き方です。黒い戦が通常の水道利用ですが、普通は23時ごろにトイレに行って寝てしまいます。

 赤い線がその日の水道の利用の線なのですが、0時に試合が始まる前にトイレに行っておこうと思うからまだ水道を使っていますね。試合が始まるとテレビの前で動きませんから、トイレに行くのを我慢して、水道の需要がぐっと減っています。ハーフタイムになったら、あわててトイレに行きます。そしてハーフタイムでトイレに行って戻ってきて、またテレビの前で釘づけになりますね。決着が付かなくて延長戦になるので、またあわててトイレに行きます延長戦のハーフタイムは5分しかありませんから、少し遅れて帰ってくる人がいますね(笑)。幸いこの決勝戦、日本が勝ちましたので、最後にお風呂に入ってゆっくり寝るということで赤い線がずっと上がっています。

 なぜこんな話をしているかというと、東京という緻密に構成された都市は何か1つでも間違いがあったら、この間の3.11のように350万人の人が帰れなくなったりします。水道も使っている時は圧力をかけて、使わない時には圧力を弱めるという微妙なバランスで成り立っているわけで、従って先ほど地震が起きても、なかなか壊れない水道管というものを地道にきちんと用意していくことが直下型地震に対する備えであるということです。

 同時に、これだけ緻密に運営されている東京の水道事業を海外に輸出しようということで、今、マレーシアやベトナムと交渉しています。東京電力の電気料金が2割くらい上がりましたが、東京水道のこういう料金は上げていません。

 今の政府はいろいろと不作為でやるべきことを何もやっていないのですが、これから大事なことは東京でできるだけ成長戦略を考えて、批判するだけではなくて作っていくことを考えることです。東京電力に対してはきちんと組み換えを要求する、経営のやり方についてきちんと意見を言う。そういう形で東京が、あるいは橋下(大阪市長)さんの大阪が元気になっていくことで、日本を変えていくことができるのではないかと信じて仕事をしています。

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