制作量は日本の2.5倍でも……中国アニメーション産業の光と影アニメビジネスの今(3/6 ページ)

» 2012年05月15日 08時01分 公開
[増田弘道,Business Media 誠]

『日本海賊王』に見るビジネスモデル

 そんな状況の中、目を引いたのが展示場Aの2階にあった『日本海賊王』のブース。もちろん『ワンピース』のことだが、この販売ブースは上海にある「天弘知識産権代理有限公司(Skynet Intellctual Property)」という正式なライセンスを受けている会社のものだった。

 日本では当たり前のことだが、先ほどの『クレヨンしんちゃん』の事例がまかり通る中国においては結構インパクトのある出来事なのである。

天弘知識産権代理有限公司のブース

 実はこのフェスティバルが始まった時、日本の大手製作会社なども参加したのだが、あまりに多くの海賊版事業者が出展していたため、なかばあきれて翌年から行くのを止めてしまった。そういう経緯があるので、正式なライセンスを受けた事業者の出展がいるということがちょっとした話題になるのである。

 ここではキャラクターのクリアファイルが5元で売られており、海賊版よりは高いが、日本の商品を輸入して売っている台湾事業者のブースでは15元なので、その3分の1。これならかなり競争力があると思われる。

日本の商品を輸入して売っている台湾事業者のブース、かなりの人気で毎年出展社数が増えている

 聞けば天弘知識産権代理有限公司の総経理(社長)は日本人とのこと。中国在住の経験が豊富なのだろうと思われるが、このように中国企業でありながら日本人が代表を務めるケースは注目に値する。中国において日本製アニメに対する需要は非常に大きいが、著作権意識が徹底している日本のアニメ企業にとって、それをないがしろにする中国(人)に対しての潜在的な不信感がある。

 その意味で、この天弘知識産権代理有限公司のような存在は日本サイドにとって非常に心強い。このような会社が増えれば中国でのアニメビジネスが一気に拡大する可能性も見えてくるではないかと思う。

紅白歌合戦を思わせるオープニングイベント

 毎年初日の夜には好例のオープニングイベントが行われるが、これがまた並外れたスケールを誇っている。場所は西湖の近くにある8000人収容の黄龍体育館。次画像はその中に設置されたステージである。

 国から省、市に至る政府関係者のあいさつが終わると、ショーの始まり。中国本土のみならず、台湾やシンガポールで活躍する中国系の人気歌手などが続々登場。杭州の友人に聞いたところ、アニメーションとはあまり関係ないキャスティングであるそうだが、その中でアニソンを歌うアイドル風の女性も登場。歌手が変わるたびにステージを中心とした設営が大胆に変わるのだが、さながら紅白歌合戦を見ているようだ。

 その中でも驚いたのはアリーナの仕掛けであった。毎年そこには大きな山車が登場し、群衆で演舞を行うのだが、今年は何とスケートリンクとなっていたのである。しかも、アイススケートのプロをロシアから招聘したとのこと。これには度肝を抜かれてしまった。

 日本の感覚なら軽く億を超える規模の予算であろう。正直なところ、アニメーション関連のイベントと言い難いものはあるが、一見無駄とも思えるほどのスケールのショーをやれることにも中国の勢いを感じてしまうのである。

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