ちきりんは「テキスト、書き言葉」という比較的一般的な表現方法で自分を表すことが得意でした。小さいころから作文はよく入選していたし、文章を書くことが大好きで、日記をずっと書いてきました。テキストという一般的な表現ツールが自分に合っていた私のような子どもはとてもラッキーです。
でも、そうでない子もたくさんいます。自分に合った表現方法が見つからなくて、周りに自分のことが理解してもらえなかったり、自分自身が自分をうまく扱えなかったりすると結構つらいです。
わかってもらうことをあきらめたり、拒絶したり、絶望したりするかもしれない。時には暴力や、“閉じる”という行動によって、それを表現することになるかもしれません。
当然だけど、表現方法の幅よりも、人間の心の中にあるものは圧倒的に多彩で多様です。だから、それを100%表現するのは誰にとっても不可能でしょう。だけれども、できる限りそれらを具現化することにより、個々人の疎外感という不幸を減じる大きな力にはなるはずです。
だからそのツールとなりうるものは、できるだけ多く、早い時期に体験できるよう、小学校などで触れる機会があればいいなと思います。
それとその際、「表現方法を探す」ことを明示的な目的として認識させれば、より生産的とも思います。
言葉で表現できない感情を抱える(認識する)というのは、「誰も俺を分かってくれない!」わけでも、「コミニケーション能力が低い」わけでもなく、自分に最適な表現ツールをまだ手に入れてない(出会っていない)だけだと教えるのです。そして、その手段を手に入れるために、いろいろ試してみればいいのよと、言ってあげるのです。
今もしあなたが、「誰にも伝えられない、分かってもらえないことがある」と感じているとしたら、それはもしかしたら「それを伝える“自分の表現法”とまだ出会っていないから」なのかもしれません。
そんじゃーね。
ちきりんさんによる新刊『社会派ちきりんの世界を歩いて考えよう!』が5月19日に発売されました。
崩壊前のソビエト連邦から東南アジア、アフリカまで、数十カ国を旅したちきりんさん。世界を旅しながら、考えたことをまとめています。ちきりんさんによる紹介エントリはこちら(「PR)世界を歩くと、ホントにいろいろ考える……」)
兵庫県出身。バブル最盛期に証券会社で働く。米国の大学院への留学を経て外資系企業に勤務。2010年秋に退職し“働かない人生”を謳歌中。崩壊前のソビエト連邦など、これまでに約50カ国を旅している。2005年春から“おちゃらけ社会派”と称してブログを開始。著書に『自分のアタマで考えよう』『ゆるく考えよう 人生を100倍ラクにする思考法』がある。Twitterアカウントは「@InsideCHIKIRIN」。
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