潜在顧客は570万人!? 補聴器の普及の方策を考えてみたそれゆけ! カナモリさん(2/2 ページ)

» 2012年06月27日 08時00分 公開
[金森努,GLOBIS.JP]
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デコ補聴器の4Pとは

 となると、必要なのは価値観の転換をうながすコミュニケーションとなる。。上記潜在顧客層を動かす設計を試しに「4P」で考えてみた。

 「Product(製品)」としては、「アクセサリー的に積極的に“魅せる”補聴器」というレベルまでデザイン性を高めてはどうだろうか。ネットで検索すると、自ら装飾を施した「デコ補聴器」を作り上げるユーザーも登場している。

 愛知県岡崎市のあいち補聴器センターでは、「難聴児らが補聴器を嫌がるのに悩んでいた時、携帯電話を飾りつけたデコ電や、デコカメラを紹介するテレビ番組を見て、取り入れようと思いついた」(2012年5月26日付け朝日新聞、「『隠す』から『おしゃれ』に、デコ補聴器 子ども向け→高齢者に好評」)という店長の発案により、知人のネイルアーティストと共同で始めたオーダーメードの装飾サービスが受け、「これまでに4歳から80代まで男女約40人から注文を受けた」(同)という。

 記事によると、「難聴児のために考えたが、意外にもお年寄りにも人気だった」とのことで、まだまだ伸びそうな気配がプンプン。これをさらに推し進め、「補聴器はQuality Of Life(QOL)を高めるポジティブなツールである」というポジショニングを確立する必要があるだろう。そう、ちょうど、メガネがそうであったように。

 そうした商品が受け入れられるために次のキモとなるのは「Place(販路)」だ。補聴器の販売店は細かい調整やコンサルティングが必要なため、狭いチャネルに限られている。

 それを、「Promotion(販売促進)」を兼ねて広げるのである。最終的に販売・調整するのは技術を持った既存の販売店とするにしても、受注・送客は例えば低価格眼鏡店など、より多くの店舗数を持っているチャネルにバックマージンを払って利用するのである。ファッション感覚でメガネを選ぶというKBFとも整合する。Awareness → Memoryだけでなく、デザイン見本(モック)を置くことによってTrialまで態度変容を一気に進ませることができる。

 残るは「Price(価格)」の問題であるが、新たなポジショニングが定着し、「魅せる補聴器」の販売が29%の自覚的潜在需要層により多く進めば、原価率が低減し、結果として価格低下はついてくるだろう。

 ……ここまで一所懸命考えたので、どなたかぜひ実践してみていただけないだろうか。筆者はもちろん、大好きな赤くてキラキラしたパワフルなデザインのものを、(必要になり次第)すぐ購入しますので。

金森努(かなもり・つとむ)

東洋大学経営法学科卒。大手コールセンターに入社。本当の「顧客の生の声」に触れ、マーケティング・コミュニケーションの世界に魅了されてこの道 18年。コンサルティング事務所、大手広告代理店ダイレクトマーケティング関連会社を経て、2005年独立起業。青山学院大学経済学部非常勤講師としてベンチャー・マーケティング論も担当。

共著書「CS経営のための電話活用術」(誠文堂新光社)「思考停止企業」(ダイヤモンド社)。「日経BizPlus」などのウェブサイト・「販促会議」など雑誌への連載、講演・各メディアへの出演多数。一貫してマーケティングにおける「顧客視点」の重要性を説く。Facebookでもいろいろ発言しています。


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