増税での失業率や生活苦は、確かに自殺に影響するかもしれない。
だが、個人的にはもっと影響するものがあると思っている。前にも書いたのでしつこいと思われるかもしれないが、メディアだ。自殺や死にまつわる報道が、「後追い自殺」を誘発するという「ウェルテル効果」と呼ばれる現象が現実にあってWHOも警鐘を鳴らしている。詳しくは過去の記事をみてほしい(関連記事)。
みなさんも一度はご覧になったことはあるだろうが、ワイドショーやニュースで消費税増税が取り上げられると必ずといっていいほど、蒲田とかの町工場の経営者にマイクを向けて「消費税が10%になったら首をくくらないといけない」なんて恨み節を放送する。
消費税増税議論があがってから、メディアは繰り返し繰り返し何度もこのような人々の声を報じている。意識していないが、これは「アナウンス効果」という立派な情報操作のテクニックのひとつだ。つまり、「増税」が人を殺すわけではなく、正確に言えば「増税したら死ぬしかない」という報道が人を死に誘っているわけだ。
プロバガンダ(政治的意図をもつ宣伝活動)やらPRというのは催眠術ではないので即効性はない。だから増税した年ではなく、翌年に自殺が増えるというのも理解できる。
日本の自殺率をもっと長いスパンでみると、先ほどの1998年をはじめいくつかの山がある。その中で、明治時代の1万人あたりからゆるやかに増えてきた自殺率が1930年代にドカンとあがる最初の山がある。実はこのムーブメントをつくったのはひとりの女性だ。
彼女は友人と三原山へ登って、目の前で火口に投身自殺をした。当時、自殺は珍しかったのでメディアは大きく報じた。その結果、どうなったかというと、三原山には見物客だけではなく、後追い自殺者が多発。この年だけで、未遂も含めて944人もいたと当時の新聞は報じている。こうした一大ブームにメディアは狂喜乱舞して、開局したばかりのNHKラジオでも報じ、読売新聞なんかはゴンドラによる火口への降下イベントまで決行していた。
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