私たちは“感情”で決めて“理性”で言いわけする(1/2 ページ)

» 2012年07月20日 08時00分 公開
[松尾順,INSIGHT NOW!]
INSIGHT NOW!

著者プロフィール:松尾順(まつお・じゅん)

早稲田大学商学部卒業、旅行会社の営業(添乗員兼)に始まり、リサーチ会社、シンクタンク、広告会社、ネットベンチャー、システム開発会社などを経験。2001年、(有)シャープマインド設立。現在、「マインドリーディング」というコンセプトの元、マーケティングと心理学の融合に取り組んでいる。また、熊本大学大学院(修士課程)にて、「インストラクショナルデザイン」を研究中。


 うれしい、悲しい、楽しい、むかつく、幸せ、好き……こうしたさまざまな感情は、何かを見たり聞いたり体験したりした際、自然に湧き出てくるものです。感情は「自然に湧き出てくる」、言い換えると「無意識」に発生するため、感情の湧出自体を抑えることはできません。

 ……というのも、「楽しいな!」などと、自らの感情を知覚できた時には、当然ながら、すでにその感情は生まれた後だからです(もちろん湧いてしまった感情が高まり過ぎないように、操作することは可能ですね。例えば、怒りの感情が湧いた時、深呼吸するなどして、暴言を吐いたりしないように気を付けるとかです)。

 すなわち、私たちはあらゆる状況において、何らかの「感情」が「理性(思考)」に先立って発生しているのです。

 消費行動においても同様です。ある商品・ブランドを見た時、私たちの心の中には、「かわいい」とか、「きれい」とか、「ダサい」とか、パッと無意識に何らかの感情が生まれています。

 そして、ある脳科学の実験によれば、脳の変化を測定し、さまざまな商品・ブランドを見た際の感情をとらえることで、「この商品を欲しい」と実験協力者が意思表明する以前に、その人が購入したいかどうかを予測できることが分かっています。

 すなわち、私たちは無意識の領域で生まれる「感情」に基づいて、商品・ブランドを購入したいかどうかを直感的に決めていると言えるでしょう。

 ただし、その後、詳細な仕様や価格、アフターサービスの有無などを比較検討する「理性(思考)」のプロセスが入りますので、必ず購入に至るわけではありません(ガム、スナック菓子など、単価が安く身近な商品では、思考プロセスが省略され、多くは感情のみで購入されますが)。

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