インタビュー
» 2012年07月24日 08時00分 公開

僕は、だれの真似もしない:なぜ日本メーカーは「イノベーション」ができないのか (2/3)

[まつもとあつし,Business Media 誠]

「あなたが欲しかったのはこれでしょう!」と言い切れる強さ

――前刀さんがライブドアの譲渡後、2004年に米アップルに移られてすぐ任されたのはiPod miniでした。

前刀禎明氏 前刀禎明氏(撮影:田中秀和)

前刀氏: 就任して3カ月後には発売という状況でしたね。当時、アパレル大手のバーニーズニューヨークと組んで、iPodをファッションとセットで訴求するというプロモーションを行いました。そこで強く意識したことは製品自体の良さはもちろんですが、それだけじゃない。半分くらいはそれを世に送り出したときの説得力、共感を生む力が重要だということですね。

 「あなたが欲しかったのはこれでしょう!」と言い切れる強さや自信がそこにはある。今日の日本メーカーにはそれが欠けているのです。携帯電話が良い例ですが、多様なニーズにすべて応えようとして、どれ1つ突出したものがない。結果として妥協の産物になってしまっている。

――一方で、iPhone誕生の逸話として日本のiモードの端末やサービスをアップルはつぶさに研究していたという証言もありますね。

前刀氏: 私が在籍していたとき、すでに社内にはiPhoneのプロトタイプが存在していました。ご指摘のiPhoneに限らず、私がジョブズとの面接で見せたVAIOなど、さまざまな製品をよく研究していたことは事実です。アップルには素晴らしい製品に敬意を払いながら、ユーザーにとって良いものがあればそこに学ぼうという姿勢がありました。

――「ユーザーにとって良い」要素は、市場調査で発見することはできない、というのもジョブズ氏の功績を語る際、よく触れられる点です。

前刀氏: そういった市場調査で「顧客ニーズを満たす」というアプローチは間違っていますね。いま顕在化しているニーズを仮に把握したところで、それを製品化できるのは3〜4年先です。そのとき、すでにニーズは変化して時代遅れになってしまっている可能性が高い。これは私がいたときのソニーでも指摘されていました。

――とはいえ、今でも毎年恒例のように市場調査はほとんどの企業で行われています。

前刀氏: 「仮説検証」のプロセスがないままに行われていることが問題です。例えば、携帯電話の市場調査で「カメラの画素数はどのくらいあれば売れるのか?」といった設問があったりする。そんなのナンセンスです。ユーザーはカメラの画素数で携帯を選んでいるのではないのですから(笑)。

 製品カタログの最後に機能比較のページがついていますが、日本人はあれが大好きなんじゃないかと思います。いわば通知表、偏差値教育の弊害じゃないかとすら思う。でも、大事なのはそこじゃない。

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