ノリにのっている企業の社長は、「できるかも」からビジネスモデルを発想する窪田順生の時事日想(2/3 ページ)

» 2012年07月24日 11時00分 公開
[窪田順生,Business Media 誠]

なんてドンブリ勘定なのだろう

代表取締役社長執行役員の武藤英明氏

 本書のなかで紹介されている「賃貸経営テクニック」はどれも実践的だ。

 例えば、ネットで物件を探すのは当たり前の今、どんなにいい物件でも「検索上位」にヒットしなくては意味がない。そこで、検索されやすい「6万」とか「6万5000円」という「キリのいい家賃」にして設定し、「ブロードバンド無料」など「絞り込み検索」に有利な設備をつけて目立たせるのだという。

 もしなかなか契約されない部屋があれば、「家具付き物件」などの付加価値をつける。内覧者に設備の良さをアピールするために、さまざまなポップをつくって室内に貼る。さらに、募集チラシのデキがあまり良くなかった場合、自分たちでつくってしまう。正直、「そこまでやるか」というぐらい芸が細かい。

 これらの発想の根底にあるのが、武藤氏が抱く「賃貸のプロフェッショナル像」だ。

 勘や経験に頼らず、あくまでデータに基づいて合理的に経営管理をすすめていく。この計数管理による経営が「プロの経営」なのです。(本文より、以下同)

 きわめて論理的に物事をすすめ、小さい数字を積み重ねて大きな儲けを生む――。このような氏の経営哲学のルーツは、実は幼少期につくられている。生家が「卵の卸問屋」でよく店番をさせられており、社長だった祖父から、「収益性の低いビジネスモデル」を学んだというのだ。

 物件全体で家賃のバランスをとったり、情報サイトのコメント欄を有効活用したりするというのは、この「卵のビジネスモデル」が発想のもとになっています。

 その後、武藤氏は商社や外資系企業勤務を経て、ITベンチャーなどの起業に関わった。起業家として次のビジネスモデルを模索していた時、とあるマンションデペロッパーのIR役員を務めた流れで「未来の賃貸管理はどうあるべきか」を考察するシンクタンクを起業。賃貸管理のビジネスモデルを徹底的に研究したところ、ビックリしたという。

 「なんてドンブリ勘定なのだろう」

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