アップルやグーグルも無視できない!? HTML5はなぜ重要なのか?遠藤諭の「コンテンツ消費とデジタル」論(2/3 ページ)

» 2012年07月26日 08時00分 公開
[遠藤諭,アスキー総合研究所]
アスキー総研

オープンな規格であるメリット

 スマートデバイスの時代の覇権を、アップルやグーグルといった限られた企業が、そのOSによって握ることのインパクトは大きい。こうした状況の中で、固有のプラットフォームを持てない企業はどうすべきなのか? 列強の支配下にない唯一のアプリの動作環境がHTML5なのだと言ってよい。

 HTMLはWebを記述するためのマークアップ言語だが、HTML5になると、できることに大きな違いが生じてくる。例えば、HTML5アプリとして書かれたEvernoteやローカル版Gmailでは、通常のWeb版のようにアクセス時にデータの読み込みで待たされることがない。HTML4.01まででは、端末側にはクッキーやURLに文字列を付け足すような小技しか使えなかったが、HTML5では端末側にデータベースを持てるからだ。

 ひと言で言えば、HTML5(とJavaScriptなどの組み合わせ)で、iPhoneやAndroidのアプリでできることはたいていできるようになる。細かな説明をするよりも、ChromeなどのHTML5対応ブラウザ上で、スマートフォンで動かすのとソックリに『Angry Birds』が遊べるのを見れば分かるだろう。

 HTML5はオープンな規格なので、テレビ放送のような公共性のあるメディアと一緒に送り出すデータの形式としても好ましい。何十年、何百年先でも読めるようにしておきたい電子書籍についても、私企業が管理するものより、Webの標準規格でやったほうがよいという意見もあるだろう。

 もし、私がアップルやグーグルだったら、こういう「世界は平等だ」というような運動は目障りに感じると思う。しかし、今のところ両社はHTML5を推進している代表的な企業で、そもそもHTML5のもとになる規格を作ったWHATWGの設立メンバーの1社はアップルなのだ。また一説には、iOSやAndroidアプリの70%は、HTML5が中身に使われているという。

 HTML5の推進は、オープンソースのFirefoxブラウザーを開発する非営利団体モジラ財団も取り組んでいる。彼らは、ブラウザやメーラーに続いて、HTML5ベースのブラウザOSを開発中だ。ブラウザOSとは、すでにサムスンからChrome OS搭載ノートPCが発売されているように、Webブラウザしか動かない端末で使われる。HTML5のためのハードウエアの世界と言ってもよい。

 ことほどさように、スマートデバイス時代の“バルカン半島”の情勢がどんな風に転ぼうが、HTML5は、キーテクノロジーであり続けるということだ。次図は、そうしたHTML5の主要プレイヤーのちょっとネジれた関係を示したものである。

HTML5をとりまく主要プレイヤーとアプリ、ブラウザ、ブラウザOSの関係図

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