人間の滑稽さをなぜ伝えないのか? 報道されない現場のネタさっぱり分からなかった、3.11報道(4)(2/4 ページ)

» 2012年07月28日 00時00分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]
相場英雄氏

相場:現地ではボランティアでツアーをやってくれる人もいらっしゃいますし。現地でささやかだけど、昼ご飯食べて、ビール1本追加するだけでも、確実にお金が回りますから。

烏賀陽:報道に無関係の人が、現場に足を運ぶことの大切さもあるんですよ。「ニュースにならなかった部分を見る」ことです。報道というのがいかに一面的でしかないか。現実のほんのカケラのような断片しか報じていないか。それを知るだけでも違う。つまり、マスコミが報じていることで「現実を知った」ということにはならない。この認識は大事だと思う。

 海岸部に行き、津波でぺしゃんこになった家から、180度ふり返れば普通の町がある。ラーメン屋でラーメンを食っている光景がある。場所によってはキャバクラがあったりする。人間が生活していた場所には、そうしたリアリティが必ずある。それを知ると、ニュースの現場が「自分の日常生活」と連続して見えてきます。マスコミ的なステレオタイプを必ず裏切ってくれます。

相場:現実を知る面白さがありますよね。

烏賀陽:別に報道記者じゃなくても、現実というのは面白いものだなあと、一般の人も思うはず。

 日本人は真面目なので、「被災地に行ったらボランティアをしなくはいけない」とか「死者にお悔やみを」と考えがちですが、そんなものはどうでもよい。「物見遊山でええから現場に行け」と思う。「人が死んでいたところに建ったキャバクラにオッサンたちがわーわー集まっとる」とか「パチンコ屋が大盛況だ」とか、人間って案外たくましい。「被災地はこんな困っているのに、そんな人たちから盗む泥棒が入るのか」とか。現実はものすごく滑稽で、グロテスクです。ある意味、不謹慎で、とんでもない。だからリアルなんです。そういう部分がいろいろと見えてくると思うんです。

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