はてなダイアリーの片隅でさまざまな話題をちょっと違った視点から扱う匿名ブロガー“ちきりん”さん。政治や経済から、社会、芸能まで鋭い分析眼で読み解く“ちきりんワールド”をご堪能ください。
※本記事は、「Chikirinの日記」において、2010年5月10日に掲載されたエントリーを再構成したコラムです。
以前、新卒採用イベントでソフトバンクの孫正義社長が行ったスピーチ(参照リンク)を思い出しながら、「世の中を変える人になるための条件って、何だろう?」と考えてみました。例えば、「“能力”さえあれば、世の中を変えられるか?」と聞けば、大半の人が「NO」と即答しますよね。
みんな直感的、経験的に「能力さえあれば世の中を変えられるほど甘くはない」と理解しています。では能力のほかに何を持っていれば、“世の中を変える人”になれるのでしょう?
孫社長がスピーチの中でまず強調していたのが“志”。「自分の人生において何を成し遂げたいのか」という具体的な目標です。
加えて、「志がないと必死で頑張ってもだめ。志を持たずして頑張っても“さまよう”だけ」とおっしゃっており、その言葉の中には、もう1つの条件も表れています。それは“必死で頑張る”こと。
確かに能力の高い人が、早期に志を定め、必死で頑張ったら……いいところまでいけそうですね。でもスピーチを聴いているうちにもう1つ必要に思えたのが、「正しいやり方」とでもいうべきものです。
目標を実現するために、具体的には何をやるべきか、どこから攻めるべきか、どの程度押すべきで、いつ退くべきか、みたいな方法論。これを間違うと、能力や志があって頑張っていても、既存の社会から、拒否されたり追い出されたりするんですよね。
世の中を変える可能性があった人の中で、若い時、もしくは一番働き盛りのピークのタイミングで、社会につぶされちゃう人、もしくは“自滅しちゃう人”は実際にたくさんいます。
もちろん、だからといって既存社会に迎合していては世の中を変えるなんてできないわけですが、一方であんまり無茶をするとつぶれてしまう。今回あのスピーチを聞いていて、孫社長はその辺りがとても巧かったんだなと思いました。
スピーチの中で、総務省に乗り込んで「NTTに公正な商売をしろと言え」と直談判した話がでてきたのですが、これだってやり方を間違えるとつぶされていた可能性は十分ありますよね。
テレビ局を買おうとしたり、銀行を買った時の引き際も、1つ間違えてたらどうなっていただろうと思います。孫社長はそのあたりの“引き”がすごくうまいのです。
また、「宝を見つけるためには、地図を手に入れる必要がある」という発想で、コンピュータ見本市自体(開催会社)を買うのは、大胆なようで実は超論理的です。
会社の規模にそぐわない大型買収など、一見無茶をやっているように見えますが、実はかなり考えた上で選択している。だから結果としてここまで来れているんだと思います。
孫社長が留学前に藤田田さん(元日本マクドナルド社長)に「米国で何を学ぶべきか?」と聞きに行った話も読みましたが、この時、藤田氏は「コンピュータを学んでこい」とアドバイスしたのだそうです。
「米国で何を学ぶべきかは、米国を代表する商品であるハンバーガーで成功している藤田氏に聞きに行くのがいいはずだ!」と考えた孫氏のセンスも、飲食業の経営者でありながら「コンピュータを学んでこい」と行った藤田氏もすごいです。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング