いじめ追放のカギは“自尊感情”の育成(1/2 ページ)

» 2012年09月04日 08時00分 公開
[寺西隆行,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール:寺西隆行(てらにし・たかゆき)

株式会社Z会教材編集部理科課長(兼小学生コース教材担当)。幼児から大学生・若手社会人の教育に携わるZ会で、理科の教材編集に携わる社員のマネジメントと、小学生向け商材の開発担当を担う。前任はWeb広告宣伝・広報・マーケティングなどを担当。


 8月30日に文科省で開催された第81回初等中等教育分科会を傍聴してきました。

 最初のテーマは「いじめ問題に対する取り組みについて」。会議中、分科会長代理の安彦忠彦氏(神奈川大学特別招聘教授)が、次のような趣旨の発言をしました。

 「いじめる子は、自尊感情が低い。自尊感情を育まなければ、誰だっていじめっ子になる可能性がある」

 傍聴席で「うんうん」とうなずきました。「自尊感情」について、初めて聞く言葉だという方もいらっしゃるかもしれません。コトバンクによると、「自分には価値があり尊敬されるべき人間であると思える感情のこと」と説明されています。この感情が低いと、いじめにつながるのです。

 「いじめっ子のタイプは?(子育てナビ)」「いじめについて(益田市立吉田小学校のおたより)」「人権講演会 今を生きる(兵庫県立加古川西高等学校育友会)」といった記事も合わせて読むと、それは「間違いない」と思いませんか?

 そして残念ながら、日本の子どもは米中韓の3つの国に比べ、自尊感情がとても低いという結果が、財団法人日本青少年研究所の調査で明らかになっています(参照リンク)。「日本社会からいじめの発生を極小化させるためには?」の解として、「自尊感情を育むこと」は落とせない項目だと断言できますね。

 そのためにできること。何よりも、子どもをほめる機会を増やすことが大事です。これは、先日、三島市で講演された、教育評論家の親野智可等さんも、何度も強調されていました。山形新聞のサイト「わいわい子育て」の親野さん講演会のレポートにも書かれています。

 「ほめる」ことと「甘やかす」あるいは「おだてる」ことは、形だけ見るととっても似ていますが、本質は全然違います。「ほめる」こととは、実際に「良い」と思えるところを発見して、それを表現すること。ここには保護者の積極的関与と、子どものためを思う真剣な気持ちの投影があります。

 「甘やかす」こととは、良いことではないことを放置したままにしたり、「自分の子」だけを過剰に守るために「○○ちゃんはいい子だからね」と表現したりすること。ここには保護者の消極的関与と、子どものためではなく自分自身のためという保護者自身の欲の投影があります。

 少なくとも「私、甘やかせていないかしら……」と心配する保護者の方は、子どもへ積極的に関与する姿勢が見えますので、意識して「ほめる」自分を作っていく方が、子どもの自尊感情向上につながると思います!

 また、自尊感情の向上は、学力向上に直結します。何より、勉強しようとする姿勢が育まれますから。親野智可等さんも同じことをおっしゃっていました。

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