大田区が「京急蒲田問題」をひっこめた本当の理由杉山淳一の時事日想(3/5 ページ)

» 2012年09月07日 00時00分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

羽田空港アクセス向上は大田区にもメリットがある

 一方、大田区は羽田空港関連整備の一環として、2010年に「羽田空港跡地利用OTA基本プラン」を発表している。羽田空港移転後の空き地を3つのゾーンに分けて、文化・産業・国際交流の拠点にする構想だ。国内外から大田区に集客するので、大田区民に恩恵をもたらす。だから大田区以外からの羽田空港アクセスが重要だ。京急電鉄が羽田空港アクセスを便利にしてくれたほうが都合がいい。

大田区が構想する空港跡地再利用計画(出典:大田区)

 もちろん羽田空港は大田区のものではない。首都東京、そして現在は再び日本の空の玄関となった。京急蒲田駅付近立体交差事業について、国の補助や東京都の出資の期待はそこにある。そして羽田空港が盛り上がるほど大田区にメリットがある。その羽田空港に寄与する京急電鉄に対して、大田区は拳を上げてしまったわけだ。

 ともあれ、京急電鉄の10月のダイヤ改正を受けて、大田区は「受け止める」とコメントを出した。実際は通過列車は残るから、「歓迎」というより「渋々承知」という心境かもしれない。それでも大田区は事態を収拾したかった。そのタイミングをうかがっていた。

 なぜなら、この事態を収束させないと、大田区の次の案件が進まなくなる。空港跡地もそうだが、「蒲蒲線計画」では京急電鉄が重要な役割を担うからだ。

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