コラム
» 2012年09月11日 08時00分 公開

窪田順生の時事日想:天才チンパンジー“パンくん”の女性襲撃は予見されていた? (2/3)

[窪田順生,Business Media 誠]

何度となく警告が

 最初はパンくんが“全国デビュー”を果たした直後、2005年。環境省が日本動物水族館協会を通じて、パンくんの飼育実態の調査を行ったことだった。

 ご存じない方もいるかもしれないが、チンパンジーは「国際希少野生動植物種」で繁殖や研究以外の目的で飼育はしてはいけない。つまり、オーバーオールを着せて「見世物」にしている「志村どうぶつ園」は厳密にはアウトだ。が、どういうわけかこの調査を経て、テレビ局が受けたのは「行政指導」だった。

 強制力のない行政指導なんて屁のツッパリにもならない。パンくんは瞬く間にスターダムにのしあがっていったが、これに良識のある学者が待ったをかける。

 翌2006年、国内の霊長類学者らで作られる研究団体が、「極端な擬人化」などの演出方針の見直しを求めて、「チンパンジーのTVバラエティ等における使用に関する要望書」を提出したのだ。

 しかし、「パンくん」と名指しにしなかった学問の徒らしい優しさを逆手にとって、動物園とテレビ局は他人事のようにしらばっくれた。

 そして、パンくんが6歳になった2008年には、とうとう日本動物水族館協会がパンくんのいる動物園に対して、ショーと番組を止めなければ協会から退会せよと強硬な姿勢をみせたのだ。

 チンパンジーは5歳を過ぎたあたりから凶暴化する。事実、海外ではペットのチンパンジーに原型が分からぬほど顔面を食いちぎられた被害者がちょいちょい報じられているし、マイケルが泣く泣くバブルスを手放したのもこれが理由だと言われている。

 普通の感覚なら「そろそろ潮時か」となるが、そうはならなかった。この動物園は協会から自主退会してしまったのだ。

 日本中からパンくん見たさに客が訪れる。膨れ上がった人気とカネを自らドブにすてることができなくなっていたのだ。「ファンを見捨てるのか」なんて脅し文句で、人気アイドルの引退を、事務所やらテレビ局やらがどうにか先延ばしにしようとする構図とよく似ている。

 かくして、動物園の強気の姿勢にのっかって番組出演も続行され、20歳のうら若き女性に飛びかかるという事態となったわけだ。

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