「赤青白のサインポールのない理髪店なんて……」、シグナルの重要性を考える(1/2 ページ)

» 2012年09月12日 08時00分 公開
[松尾順,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール:松尾順(まつお・じゅん)

早稲田大学商学部卒業、旅行会社の営業(添乗員兼)に始まり、リサーチ会社、シンクタンク、広告会社、ネットベンチャー、システム開発会社などを経験。2001年、(有)シャープマインド設立。現在、「マインドリーディング」というコンセプトの元、マーケティングと心理学の融合に取り組んでいる。また、熊本大学大学院(修士課程)にて、「インストラクショナルデザイン」を研究中。


 8月末、事務所(文京区本郷)の近くに「1000円理髪店」がオープンしていました。

 この理髪店のある通りはほぼ毎日通っているのですが、開店して数日はまったく気付かなかったのです。友人に教えられてようやく「あれ、そうなんだ!」と驚いた次第。ちょうど髪を切ろうと思っていたところだったので早速入ってみたところ、閑古鳥が鳴いていました(笑)

 チェーン店ではなく、個人での開業です。徒歩10分圏内に同一価格帯の競合店はなく、また東京大学も近いことから、立地としては「穴場」だと思われます。オーナーさんに髪を切ってもらいながら話をしたところ、開業したてだし、夏休み中で学生さんも少ないので、駅前でチラシを配布するなどの販促はまだ行っていないとのこと。

 まあ、最初から千客万来とはいかないにしろ、お客さんが少ないのは残念なこと。もちろん、開店したてで、そもそもの存在が認知されていないのが最大の原因であるのは、オーナーも自覚していました。

 とはいえ、私自身、毎日前を通っているのに気付かなかったのは、理髪店でおなじみの「サインポール」(赤・青・白の渦巻き模様)がまだ手配中で届いていなかったという理由が大きかったです。

 料金などを表示した「立て看板」は、外の見えるところに出してありました。しかし、あのサインポールがないと、たとえ理髪店だと分かったとしても、何となく店に入る気がしないものです。

 私たちは小さいころから、「あのサインポールは理髪店だ」ということを経験などを通じて繰り返し学習し、無意識に結びつけるようになっています。

 「赤青白のサインポール」→「理髪店」という条件反射が形成されているというわけですね。従って、サインボールがない場合、「理髪店」であるとの連想が起こらず、「多分、理髪店なんだろうけど、大丈夫かな……」という不安をかきたててしまうのです。

 つまり、理髪店にとって、あのサインポールは、「うちは正真正銘の理髪店です」ということを直感的に知らせることのできる「シグナル」(合図)としての重要な役割を果たしているのです。

 ちなみに、冒頭の1000円理髪店の店頭には、先日からサインポールが存在感を示しています。やっぱりあれがあると違う! 今後、来店客は着実に増えていくことでしょう。

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