“地獄の一丁目”にいるのは誰か――ヤミ金が増えている「弱者」はなぜ救われないのか(5)(3/5 ページ)

» 2012年09月26日 00時00分 公開
[増原義剛,Business Media 誠]

警察もヤミ金増加を示唆

 そして、こうしたヤミ金を取り締まった経験がある元警察関係者もこう証言する。

 「やはり今はカネ詰まり。一般人は借りるところが減っているので正式統計はさておき直感としては、ヤミは確実に増えている。ヤミ金業者が、回収が難しいなどと言うこともない。最初から高利子の部分を差し引いて貸すので回収が最後できなくても何とか儲けにつないでいく奴らが多い。それとオレオレ詐欺からの転向組がけっこういる。貸すカネは小口だ。3万円、4万円が多い。これで10日で3割、5割でも全国的に展開するので1日何百万円にもなる業者もいる。2万円の利子でも50人の客がいれば1日100万円になる。1カ月なら3000万円だ。現金化業者で脱税などでやられたりした30歳代の奴がいたが、年間1億円近く儲けてカネの使い道がなくてキャバクラでひと月で500万円も豪遊していた。とにかくいつもピリピリ、食うか食われるかでやっているのでたまに麻布、六本木とか新宿でラフな格好で豪遊しているのはヤミ金とかオレオレが多い。もっとも今はヤクザが暴排令で収入が激減しているので、ヤミ金で儲かってそうなのは狙われる。俺の知っているヤミ金もヤクザに狙われ消えた」。

 そして摘発する警察も相当大変だという。同じ部署では(主に生活安全課)風俗の許可証の発行、薬物摘発などもある。

 「薬物が増えているので、ヤミ金はその合間にやる。ヤミ金に使った携帯を押収して通話記録も取り、証拠固めをする。昔なら警察が申し出れば、通信会社でも気楽に協力したが今はそうではない。通信記録も口座の入金、出金記録も1つひとつ裁判所の令状を取らなければ出してくれない。裏取りをして令状を取ることを、警察用語で『ドカン』という。それで捜査員の間では『オイ、ちゃんとドカン取ってるか』などとやる。それほど大変だ。とにかく1つの警察で年間、100件のヤミ金がいたら2件摘発できればいいほう。だからなかなか摘発しにくいのではびこるのも多いのだ」。

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