――cakes全体をどのように進めていくのか、事業目標はどのようになっているでしょうか。
加藤 人数としては年内、あるいは年内と言わず、まずは1万人に早く到達したいです。今の収益配分のスキームを踏まえると、一定数の作家の方に、相応のお値段で仕事として依頼して遜色ない数字が成立するラインです。まずはこの1万人を当座の目標としています。
次の目標は10万人。この数字になると、上位の書き手はcakesへの執筆だけで、かなりお金をもうけることができるようになります。10万到達くらいまでだと、いいコンテンツを作って集めるというのももちろんですが、出版社さんやいろんなメディアなどを含めてコンテンツのアグリゲーションをしていくのが軸でしょうか。オープンにしていくのは10万人を超えてからと見ています。
コンテンツの出し元というと、メディアに限らず企業でもいいコンテンツを持っていることは多いです。例えば、JTのサイトには非常に充実したインタビューシリーズがあるなど、企業サイトにも優れたものは少なくないですが「知る人ぞ知る」存在ですよね。こういうのを上手くまとめて、多くの人に届けることもやっていきたいです。
――cakesは出版社と競合するのでしょうか。
cakesがやろうとしていることは、従来の出版社がやってこなかった領域なので、役割としては競合しません。cakesのコンテンツを本にするなどは、問題なくできます。既に本になっているものをcakesに出してもいいです。ここは強く言いたいところなのですが(笑)、出版社などとは競合していません。ぼくたちは新しい市場をWeb上に作ろうとしているんですよ。
――昔でいう「雑誌で書いて本にまとめて」という動きに似たものに見えます。
加藤 まさしく同じ使い方はできます。雑誌が無くなってきていて、若手層が出てくる先も無くなってきてるように見えます。今、雑誌のライターだと30代真ん中くらいが一番若くて、その下がいなくなってますよね。(cakesは)そういう若い人たちも活躍できるような場所にしたい。
理想を言うと、あらゆるコンテンツが入っていて、自分の欲しい物だけ出てくる、コンセプチュアルな書店みたいなものを作りたい。記事のパーソナルソーティング※が鍵です。
Webだと「コンテンツは検索すればいいじゃないか」みたいな声もありますが、知らないことは検索できないですから、ソートしておすすめしてくれる、といったコンテンツ接点は大事。朝起きて、電車に乗ったところでcakesを開くと、まさに自分が読みたい、大好きなものが5個載っている。昼休みに開いたら、また5個載っている……そういうものにしたいです。
――会社の中での役割分担、編集者ではなく経営者・加藤貞顕は、社長業として何をやっているのでしょう。
加藤 CFO的な役割は磯崎哲也さんにお願いしています(注:公認会計士の磯崎哲也氏。ブログ・メルマガ「isoloague」で著名)。私は、編集長っぽい役割と経営の両方ですね。あとは資金を調達するために金融関係のかたと話したりもしますし、サイトの設計についてもエンジニアと相談しつつすすめています。コンテンツとビジネスとテクノロジーをむすびつける仕事ですね。
会社の経営って、実際にやってみると、かなり編集の仕事に似ている面があります。いろんな才能のある人でチームを作って、一定のビジョンと世の中の方向性の両方を考えて、プロジェクトを進めていく。そんな仕事です。まだまだ初心者ですけど、面白いですよ。
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