Webに、超一流作家のコンテンツを出せる場所を――cakes代表・加藤貞顕氏インタビュー(1/7 ページ)

» 2012年09月28日 08時00分 公開
[渡辺聡,Business Media 誠]

 9月11日、「cakes」(参照リンク)がスタートした。cakesとは、新しいデジタルコンテンツ配信プラットフォーム……というと小難しいが、平たくいうと「ユーザーが毎月定額の利用料を払えば、そこにあるコンテンツを読み放題」というサービスである。

cakesのトップページ。キャッチコピーは「クリエイターと読者をつなぐサイト」

 ネットの世界のコンテンツは、その多くが「無料広告モデル」、つまり「広告が入っている代わりに、(コンテンツを楽しみたいユーザーがその広告を見るという前提のもと)ユーザーは無料でコンテンツを利用できる」という形で運用されている。Business Media 誠もその1つだ。

 逆に、ユーザーが料金を払う有料モデルには、朝日新聞や日経新聞など大手新聞社などが中心に進めている有料電子版コンテンツサービス(参照記事)や、「まぐまぐ」や「ブロマガ」といったサービスに代表される有料メルマガ(参照記事)といったものがあるが、数としてはまだまだ少ない。

 やや角度は違うが、電子書籍も「ユーザーが料金を払う有料デジタルコンテンツ」の1つといえる。2010年ごろから電子書籍元年と言われているが、こちらも充分に普及したとは言いがたいのは、読者のみなさんもご存じの通りだ。

 有料電子版とも、有料メルマガとも電子書籍とも違う、新しいデジタルコンテンツのプラットフォームとして登場したのがcakesだ。1週間150円の購読料を払えば、載っている記事はすべて読み放題、という仕組み。執筆陣は、大槻ケンヂさん、岡田斗司夫さん、茂木健一郎さん、津田大介さん、能町みね子さん、フェルディナンド・ヤマグチさん、田端信太郎さん、やまもといちろうさんといった、非常に多彩な顔ぶれとなっている。

 cakesを手がけたのは、『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』『スタバではグランデを買え!』『英語耳』シリーズなど数々のヒット作を手がけた編集者、加藤貞顕氏である。ダイヤモンド社を辞めて独立し、新しいサービスとして始めたcakes。ヒットメーカーとして知られる加藤氏は、なぜ新しい挑戦をしようという気になったのか。新しく立ち上げたサービスに込められた意図とは。日本の出版業界の課題に、新サービスはどのような道筋を当てようとしているのか――渋谷にある、株式会社ピースオブケイクのオフィスにお邪魔して、同社の代表取締役である加藤氏に話を伺った。(聞き手は渡辺聡)

今後、本のマーケティングが変わっていく

――まずはcakesのサービスリリースおめでとうございます。滑り出しの感触はいかがでしょうか?

加藤 おかげさまでたくさんの方に見ていただいて、加入もしてもらっている印象です。Yahoo! ニュースでも目立つところで取り上げられて、ユーザー流入の多さにサーバーが落ちるんじゃないかと心配でしたが、なんとかなりました。注目していただいているようで、有難いです。

――サービスを立ちあげようと思った経緯について教えてください。

加藤 cakesを立ち上げたのは……これはダイヤモンド社で電子書籍をやっていても感じるところだったのですが……これからは本も、マーケティングの仕組みが変わっていくのだろうなと考えていたからです。マス広告だけで売っていくのは、つらいなあ、と。

 『もしドラ』も、ドーンと売ったのではなくて、ものすごく小さな販促プロモーションを個別のセグメントに向けてコツコツと丁寧に積み上げていくことによって、あれだけの数字になりました(編注:「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」は300万部近く売れ、ビジネス書年間ランキングで2年連続第1位を記録している)。小さいマーケティングを積み重ねていくことのできる、新しいプラットフォームを目指して作ったのがcakesです。

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