インタビュー
» 2012年09月28日 08時00分 公開

Webに、超一流作家のコンテンツを出せる場所を――cakes代表・加藤貞顕氏インタビュー(3/7 ページ)

[渡辺聡,Business Media 誠]

電子書籍だけやっていたら大変なことになる

――プラットフォームという言葉が何回か出てきましたが、何を目指して、どのような問題を解決するために、このサービス形態にしたのでしょう?

加藤 ダイヤモンド社でも、電子書籍についてはトライアルとして散々いろんなことをやりました。もしドラ』も電子書籍版は17万ダウンロードくらいされていて、おそらく今でもトップの数字ではないかと思います。Kindleなどでマンガなどが本格化すれば、すぐに抜かれるだろうと思いますが。

 電子書籍のトライアルをしながらマーケティングも含めて一通りやってみて、「コンテンツ産業として、これだけをやっていたら大変なことになるな」という感触を持つようになりました。コンテンツの単価はデジタルになると下がる傾向があります。電子書籍の市場が今で600億円くらい。5年ほどかけて、2000億円になるのではと各予測で出されています。同じ期間に紙はどれくらいの速度で減っていくのかを想定すると、全体としては市場は小さくなるのでは、という予測を立てられます。

 コンテンツをちゃんと流通させる、本がちゃんと読まれる状況がこの傾向で維持できてると言えるか問われると、少し疑問に思います。紙でも電子でも、メディアはどっちでも構わない。形は何でもいいから「本」が読まれるようにするにはどうすればいいのか? を思案しました。

 答えとして、やはりこの先はWebではないかと考えます。「Webでコンテンツは売れない」というのはこれまでの定説、常識的なところでしたが、今後は間違いなく多くの人がスマートフォンも含めてタブレットを持つようになります。今のiPadなどのフルサイズよりももう少し小さい、スマートフォンよりも大きいサイズのものが一般的になるんじゃないでしょうか。

 コンテンツが、タブレット上で流通するようになると、いちばん有力なフォーマットはWebなのではないか。

 インターネットも、当初はモノなんて売れないと言われていた時代に、何百億円もの資金を集めてAmazonという会社が設立され、ネットでモノが売れるということを、それこそ10年くらいかけて証明してきたわけです。デジタルコンテンツも、同じように変化していくのではないかと考えています。

超一流作家が全力で作ったコンテンツを出せる場所をWeb上に作りたい

――Webでコンテンツを売れるようになる、と。

加藤 分かりやすく言うと……現状のインターネットを見ると、Webのメディアは井上雄彦さんの原稿を載せられる収益構造にはなっていませんよね。村上春樹さんも。現在のWebにあるコンテンツというのは、大きく分けると、アマチュアが作ったコンテンツと、プロが宣伝のために作ったコンテンツの2つです。(前者はブログのようなもの、)後者は何かというと、何か他の事業やコンテンツの宣伝のために作られているようなもののことです。

 井上雄彦さんや村上春樹さんといった、スーパーなプロフェッショナルが全力投球で作ったコンテンツを出せる場所を、インターネット上に作りたい。大きく言えば、これが(cakesで)やりたいことです。

 もちろん、アマチュアがいるのを否定するものではなく、シームレスに上手くつながって行けばいいのだと思います。その中から自然と凄い人が出てくるような流れになればいい。出版社というのはもともと、この「新しい人を見つけ出してきて本の形で世の中に紹介する」ということをやっていたわけですが、今後はこの「発見してくる機能」が、Webにシステマチックに乗ってくれればいいのではないか、と。

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