鉄鋼スラグとは鉄や鋼の製造過程に出る残りカスのことで、産業物処理法上では紛れもなく「産廃」だが、再生利用が製造事業としてすでに確立していたり、自ら有効利用していたりする場合は“廃棄物に該当しない”という判例があり、「リサイクル製品」として扱われている。
そんな鉄鋼スラグが今、東北の復興のために山ほど運び込まれている、という話をちょっと前に『週刊ダイヤモンド』で書かせてもらった。
復興のためには建材が必要なんだからいいじゃないかと思うかもしれないが、実はこれにも「裏」がある。岩手県沿岸部の某市に6万トンにものぼる「鉄鋼スラグ」を運ぶこんだ運送会社幹部は言う。
「私が運んだスラグはもともと関西の港で受け入れ拒否されたものだ。青森県でも断わられて、行き場がなかったものを、復興でゴタゴタしている岩手県に運び入れた。港湾事業に使うということだそうだが、もし地元の漁師が知ったら確実に反対するだろう」
なぜか。それは、この鉄鋼スラグが「震災がれき」のように、安全と危険で立場が真っ二つに分かれているからだ。
先ほども言ったように、鉄鋼スラグはリサイクル製品で、「グリーン購入法」(国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律)の指定を受けている。しかも、もとは産業廃棄物でタダなので、「リサイクルの優等生」なんてもてはやされている。
しかしその一方で、安全性が疑わしいという意見があるのだ。
例えば2007年8月、愛知県では野積み保管された鉄鋼スラグの溶出水から環境基準を超す鉛やホウ素などが検出された。また愛媛県では塩田跡地の埋立てに5万5000トンの鉄鋼スラグを使ったところ沿岸海域で魚が浮き、カキやエビが死に絶えた――といった騒ぎがあった。製鉄業界は安全性を訴えるが当然、自治体や市民によっては「そんなもんアブないもんを押し付けるな」と強固に反対をする。
なんだか「震災がれき」と似ている。
ただ、ひとつ違うのは、自治体や市民が受け入れ拒否をしてもそれはニュースにならず、アウトローたちのビジネスになっているということだ。
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